公認会計士・税理士の藤沼です。

近年、20代~30代の会計士に人気なのが「ベンチャーCFO」というポジションです。

IPO・経理のスキルを向上できることに加え、ストックオプションも期待できることから、若手会計士の1つのゴールと言えるかもしれません。

IPOを目指すベンチャーでは、BIG4での監査経験が高く評価されるため、特にBIG4出身者へのニーズは多いです。

そこで今回は、ベンチャーCFOに転身した会計士の働き方・年収、キャリア等をまとめてご紹介します。

情報インタビュイー

公認会計士Kさん

Kさん

公認会計士・中小企業診断士

大手監査法人にて会計監査、ベンチャー企業経理部長を経て、ベンチャーCFOに転職。
現在は上場企業にて財務・経理に従事。

この記事を書いた人

藤沼 寛夫

藤沼 寛夫

公認会計士・税理士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 FAS系コンサル事務所 入社
2019年 藤沼公認会計士事務所 開業

 

ベンチャーCFOでの仕事内容とは?

ベンチャー企業のCFOとしての仕事内容は、通常の(上場企業などの)経理とは大きく異なります。

ベンチャーCFOでの仕事内容の特徴は、大きく次の3点です。

  • 経営に参画する
  • 人員が少ないため、経理・財務以外の管理も行う
  • 組織の成長が早いため、非定常業務が多い

 

① ベンチャーCFOとしての経営参画

「CFOとしての経営参画」というと、上場企業での役員会や月次経営会議をイメージされる方も多いでしょう。

しかし、IPOを目指すベンチャー企業では

 

② 定常業務

 

③ 非定常業務

 

 

■ベンチャーCFOでの主な仕事内容を教えてください

定常業務

  • 経営企画
    1. 事業計画策定
    2. 予実管理
  • 人事
    1. 人事評価制度の構築・運用・改善
    2. 給与計算承認
    3. 評価査定
    4. 採用活動
  • 経理財務
    1. 経理承認
    2. 支払承認
    3. 月次決算
    4. 銀行・投資家など外部への報告
  • 法務
    1. 契約書レビュー、承認
    2. 契約書ひな形整備
  • 総務
    1. 株主総会、取締役会などの会議体運営
    2. オフィス移転の検討
    3. 通信環境などのインフラ整備
    4. PCなどの備品購入に関するルール整備・運用

 

非定常業務

  • 資金調達活動
    1. 株式の資金調達
      • ベンチャーキャピタルや事業会社等へのアポイント、プレゼン
      • DD対応
      • 契約書レビュー及び契約内容の交渉
    2. 銀行からの資金調達(借入)
      • 既存取引行への相談・交渉
      • 新規銀行の開拓(紹介や飛び込み営業への対応など)
    3. 補助金・助成金の獲得
      • 活用できる補助金・助成金の調査
      • 書類作成やプレゼンなど申請業務
      • 関連書類の収集・整備など事務手続
    4. 社内プロジェクト運営
      • IPOに向けた課題の整理及び改善
      • 許認可取得
      • 社内合宿の企画・運営

 

■ベンチャーCFOでの年間スケジュールを教えてください

  • 決算月

在庫の整理など、監査対応にむけた準備

予実達成状況の社内周知

翌期事業計画策定完了

  • 決算月~決算後3か月以内

年度決算作業

監査対応

定時株主総会にむけた準備及び総会運営

  • それ以外の月

決算内容などをベースに資金調達活動、IPO準備に向けた課題整理・改善をその年ごとにスケジュールを切って対応

 

 

Q.転職時

■ベンチャーCFOというキャリアを選ばれた理由を教えてください

IPOを経験して、スキル・経験・金銭的なメリットを得たいと考えたため。

■ベンチャーCFOへの転職前と転職後のギャップを簡潔に教えてください

ベンチャーCFOになる前に監査法人からベンチャー企業に転職したため、ギャップは少なかった。

同じベンチャーでも社長・経営陣の年齢層で文化の違いが生じることを感じた。

■ベンチャーCFOへの転職はどの程度難しかったですか(〇社志望、内〇社書類通過、内〇社内定など)

5社志望、内5社書類通過、内2社辞退、残り3社のうち1社内定で即決定。

 

補足:

多くのベンチャー企業の調べ、案件を頂く中で入りたいと思った会社のみ志望・面接を実施。

書類審査がないケースもあったため、面接を希望した会社は面接まで実施。

同時期に面接まで実施した会社は5社ほどで2社落ち、2社辞退、1社内定で入社。

 

■ベンチャーCFOとして転職した時のIPOのステージ(N-1、N-2等)を教えてください

N-3期の第4四半期

 

■ベンチャーCFOへの転職時、ストックオプション取得による便益はどの程度考えていましたか

真剣に考えていた。

会社の現在の時価総額≒ストックオプション簿価、、上場時及びその後の時価総額は入社前に想定していた。

具体的には、最近では超えるケースもあるものの、上場時の発行済株式総数に対するストックオプションの比率は、10~15%比率が望ましいとされている。ビジネスモデル等を踏まえた今後の採用計画、ストックオプションを付与するであろう役職員の人数、その中での自分のポジション(管理系の役職員のなかで何番目の立ち位置なのか)を踏まえて、10~15%以内の中で自分にどれくらい配分するのがリーズナブルかを考えていた。既にストックオプションをはじめとしたインセンティブプランが設計されている企業であれば、それを聞くことが一番だが、そうでないケースでは、経営トップ・創業経営者と一緒にストックオプションをはじめとしたインセンティブプランの設計を行うことも、ベンチャーCFOの重要な業務の一環でもあるため、変更される可能性はあるものの、自分なりに考えておくことは非常に重要。

 

 

■ベンチャーCFOを選ぶ際のポイント(見るべきポイント)を教えてください

①経営メンバー、②事業内容、③自分の役割

の3点。

 

  • 経営メンバー

ベンチャーCFOは経営メンバーの一員でもあるため、トップ(≒創業経営者)や他のCXO、経営メンバーとの相性が最重要。今後、その企業が成長するかを考える上でも、経営メンバーの能力・人柄などに魅力があると感じれるかは重要。

  • 事業内容

少なくともIPO、その後の時価総額拡大を果たせるビジネス内容、ビジネスモデルか。ベンチャー企業は不確実な要素も多いため、海外での成功事例があるか、VCなども評価しているかは参考になるが、最後は自分の腹落ち具合。ベンチャーCFOの中でもこだわりがない人もいるが、私自身は、取り組んでいる事業や製品に興味をもてること、自信をもって広められることは重視していた。

  • 自分の役割

「CFO」や「CFO(候補)」として採用される場合と、「経理部長」や「管理部長」として採用される場合では、業務範囲や会社のなかで期待される役割が異なり、自分自身の成長するスピードや分野も異なると考えている。私自身はベンチャーCFOになる前に、別のベンチャー企業でCFOの上司の元、働いた経験があったため、次は、自分がCFO、管理系ポジションの責任者となることが重要と意識して転職活動を行った。募集要項で「CFO(候補)」と記載があるような求人でも、実際は経理やIPO準備の責任者を求めているベンチャー企業もあるため、面接の際には具体的にどのようなポジションを求めているのか、どのような組織にしていこうとしているのか、についてはしっかり聞くようにしていた。

ただし、肩書やポジションについては、あまりこだわりすぎてもよくないと感じている。「経理部長」や「管理部長」として入社したとしても、しっかり成果をだせばそれ相応のポジションにつくことができるのが通常の成長企業である。また、最初から「CFO」など、特定の役職名にこだわるのは、期待値をあげすぎることや社内のメンバーとの軋轢を生む要因になりかねないので、基本的には役職名にはこだわらず、一定の成果を上げた場合にはそれ相応のポジション、役職につけるように経営トップ・創業経営者とディスカッションして入社するのがよいと感じる。

 

 

Q.組織環境

■ベンチャーCFOに転職する会計士には、どのようなバックボーンの方が多いですか(分からなければ、ペンディングで大丈夫です)

監査法人時代にIPO支援に従事していた方が多い。(トーマツのTS出身など)

IPO支援に従事していない方も増えているが、監査法人時代の同僚のつながりなどで、ベンチャーCFOを身近に感じて転職する会計士が多い。

 

■ベンチャーCFOでのご自身の役職を教えて下さい

取締役CFO

 

■ベンチャーCFOでのご自身の年収と、その後の推移を教えて下さい

約900万円。在籍した2年半で変化なし。

 

■ベンチャーCFOでの福利厚生を教えてください

フリーランチや飲み物の支給あり。

 

■ベンチャーCFOでの残業時間を教えてください(閑散期および繁忙期のそれぞれ)

会社にいる残業時間は少ないものの、経営メンバーの一員でもあることから、常に会社のことを考えている状態。自宅でもチャットツールなどで夜間に連絡することはあるため、特に取締役になった後は残業の概念を意識することは少ない。

監査対応時期や資金調達の前後などは労働時間が多くなりがち。

■ベンチャーCFO内のチームにはどのようなものがありますか(連結チーム、単体チーム、与信管理チームなど)

会社全体の規模は20~30人程度と小規模で、管理部門全般を統括していたため、人事担当者、経理担当者なども含めた一つのチーム。

 

■ベンチャーCFO全体の人数、及び経理部内の各部門(連結チーム、単体チーム、与信管理チーム等の区分があれば)ごとの人数を教えてください

管理部門自体も社内では最大で4~5人。役割はある程度柔軟に割り振っていたが、主な担当分野として経営企画・経理・人事・総務を区分するとそれぞれ1~2名。税理士・弁護士・司法書士など士業や業務委託先も含めて関与する人をマネジメントしていくイメージ。

 

 

 

Q.スキル ・・・・・ 【ボリューム多めでお願いします】

■ベンチャーCFOに求められるスキルを教えてください(語学力、会計スキルを除く)

  • 課題解決力

特にCFOが関与する管理業務などで多様な課題があるベンチャー企業において、IPOまでのロードマップを描いて課題を認識し、優先順位をつけながら実際に課題を解決していく能力。

 

  • 資金調達能力

多様な方法、相手先からの資金調達を検討し、日常から会社のことを把握し、社外に説明していくことで資金調達を実現する能力。各種スキームに関する知見から事業計画の作成、説明する能力など多様な能力が求められる。

 

■ベンチャーCFOで得られたスキルを教えてください

  • 意思決定力

経営メンバーの一員でもあり、課題解決にあたっては会社の重要な意思決定も担うため、外部のアドバイザーとは異なる意思決定能力、胆力のようなものが得られる。

  • 交渉力

資金調達や事業運営の各局面で発生する交渉において、少しでも自社に有利になるように準備・コミュニケーションを遂行する交渉力が得られる。

 

■会計処理などで悩んだ際、どのように解決されましたか(他社事例の参照方法や、新たな会計処理を考える上で何を参考にしたか等教えてください)

監査法人時代の同僚、他のベンチャー企業などに聞く

 

■「監査法人で経験しておくべきだった事」を具体的に教えてください(無ければ無いとご回答ください)

監査法人時代に接した経営者などと継続的にコミュニケーションをとれる関係をより多く築くこと

 

Q.経験/キャリア ・・・・・ 【ボリューム多めでお願いします】

■ベンチャーCFOでの不満・デメリットを教えてください(エピソードを交えてください)

人に関するもめごと、トラブルに対処することが増える。

少しのことでは動じない強さを身に着ける必要がある。

 

■ベンチャーCFOでの良かった事・メリットを教えてください(エピソードを交えてください)

投資家が主催する勉強会などで、他の経営者、投資家などと身近にコミュニケーションをとることができること。そこで刺激をうけ、自身の成長につながったと感じる。

 

■ベンチャーCFOで感じた「やりがい」を教えてください(無ければ無いとご回答ください)

良くも悪くも自身の行動・意思決定が直接成果につながること。

資金調達活動の金額や企業の業績という結果として目に見える形でかえってくる。

 

 

■ベンチャーCFO内でのキャリア(目標など)を教えてください

IPOの実現。IPO後、時価総額を高めるためにM&Aや海外展開などにチャレンジしていくこと。

 

■ベンチャーCFOを卒業した後のキャリアプランを教えてください

他のベンチャーCFOを輩出できるような活動、投資家としての活動に従事していきたい。

 

■ベンチャーCFOから転職した際、評価された点などを教えてください

経理財務のみならず資金調達・法務など幅広い知識や課題解決の経験があること。

 

■ベンチャーCFOに転職を考えている公認会計士に、「アドバイス」と「注意すべき事」を教えてください

・注意すべきこと

将来性がないベンチャー企業というのも一定数存在することに注意。自分が入社する会社の将来性に対して、確信をもてるように様々な行動を実施すべき。

エージェントなどの一面的な紹介のみならず、実際にその企業が実施しているサービス・製品に触れてみることや、その会社の従業員・投資家など関係者の話も入社前にきかせてもらうとよい。

・アドバイス

入社したベンチャーに将来性がなかったり、当初の目論見通りIPOが実現できないなど、失敗に思えるようなことが起こっても、その過程で自分自身は必ず成長する。たとえベンチャー企業が破綻したとしても、自分自身は監査法人などどこでも働くことができるので、本質的にリスクは低い。

少しでも興味をもったら、ベンチャーCFO経験者に直接話をきいてみるとよい。CFO候補を探しているベンチャー企業は本当にたくさんあるが、ポジションが埋まるのも早いため、自分にあうと思える会社をみつけるために行動することが重要。