公認会計士・税理士の藤沼です。

「会計士は失業手当(失業保険)が貰えない」

そう思っている方が多いようです。

しかし  実は公認会計士であっても、失業手当を貰うことは可能です。

そこで今回は、私たち会計士が失業手当を受けるための要件・方法をご紹介します。

特に「独立を考えている会計士」の方にとっては、役立つ情報だと思います。

この記事を書いた人

藤沼 寛夫

藤沼 寛夫

35歳
公認会計士・税理士

2014年  2月 EY新日本監査法人 入社
2018年  7月 FAS系コンサル事務所 入社
2019年10月 藤沼会計事務所 開業
2020年  4月 税理士登録

 

会計士が失業保険を得るための「要件」

そもそも失業保険とは、「失業した人が 1日も早く就職するための給付制度」です。

そのため、次のような給付要件が設定されています。

 失業保険を得るための一般要件

  • 積極的に就職しようとする意思があること。
  • いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること。
  • 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと。

(引用:厚生労働省 Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~

上記のほか、「離職前2年間で、計12ヶ月以上の被保険者期間」が必要など、やや細かな要件(多くの人が当てはまる)が設定されています。

申請の際は、必ず厚生労働省HPをご確認ください。

 

「公認会計士登録」をしていても、失業手当は受けられる

次に、「公認会計士登録していると、給付を受けられないのでは?」という疑問についてです。

結論から言えば、平成25年から制度が変更され、問題なく受給できるようになりました。

厳密には地区によりますが、たとえば東京都青梅市のハローワークHPでは、以下のような記載がされています。

公認会計士、税理士、弁護士、弁理士などの資格を持つ方は、法律の規定に基づき、名簿や登録簿などに登録している場合であっても、開業や事務所に勤務している事実がないことが確認でき、要件を満たしていれば、雇用保険の受給資格決定を受けることができます。

というわけで、公認会計士であることのみをもって失業手当が受給できない、という訳ではありません。(雇用保険を支払っているので当然ですが)

 

公認会計士が失業手当を受けるシチュエーション

あくまで、想定されるシチュエーションのお話です。

たとえば、独立のために会社を辞めた会計士なら、次のようなケースが想定されます。

  • 会社を辞めたが、独立のノウハウを得るために一時的な就職を考えている
  • 独立のために会社を辞めたが、資金不足のため再就職を考え始めた

勢いで会社を辞め 独立したものの、「会計事務所運営のノウハウ」が無いため、会計事務所などへの再就職を考えるケースは想定されます。

特に 監査法人からいきなり独立された方は、「どうやって事務所を運営するのか」「サービスラインはどのようなものがあるのか」等、競合リサーチをしたいはず。

上記のようなシチュエーションなら、「積極的な就職の意思」があり「現在職業に就いていない」ため、受給要件に該当します。

ただし、注意して下さい。 すでに会計事務所の「開業届」を提出した場合は、受給要件から外れます。

自分の事務所を持っているのですから、当然ですね。(参考:起業家バンク

あくまで開業届を提出する前のお話です。(なお、「公認会計士登録」という意味での「開業」とは違います)

 

会計士は失業保険をいくら貰えるのか?

失業保険の支給総額は、次の算式により算出されます。

 

支給総額 = 基本手当日額 × 給付日数

 

 

① 基本手当日額

「1日あたりの手当」です。(日当のようなもの)

日額には上限があり、私たち会計士の場合は(よほどのことが無い限り)上限のMAXを受給できるでしょう。

 基本手当日額の上限(令和2年8月1日現在)

年齢基本手当日額の上限
30歳未満6,845円
30歳以上45歳未満7,605円
45歳以上60歳未満8,370円
60歳以上65歳未満7,186円

(引用:ハローワークインターネットサービス

 

② 給付日数

日額を給付してもらえる日数です。

「退職が 自己都合なのか会社都合なのか」「年齢」「雇用保険の加入期間」によって、給付日数は異なります。

ここでは、「自己都合」かつ「65歳未満」を想定したケースでご紹介します。

 給付日数

離職時の年齢雇用保険の加入期間
10年未満10年~20年未満20年以上
65歳未満90日120日15日

たとえば私を例にすれば、前々職(EY)と前職(会計事務所)で合計5年半ほど雇用保険に加入していましたので、「10年未満」となり、給付日数は90日となります。

 

③ 支給総額(一般的なケース)

仮に私が失業保険を受給した場合、支給総額は次のようになります。

7,605円 × 90日 = 684,450円

結構大きいですね。

なお、この手当は一度に貰えるわけではなく、3ヶ月(28日)に分けて給付されます。

受給までの流れは次項で解説しますが、さほど手間がかからないため、(失業保険の受給要件を満たす方は)検討すべき金額だと思います。

 

会計士が失業保険を受けるまでの「流れ」

以下、会計士が失業保険を受けるまでの「流れ」を解説します

スケジュール感を分かりやすくするために、ハローワークへの申込みを1月1日に行った場合を想定します。

また、本文中の日付は目安です。

数日~数週間前後する可能性がありますので、ご参考までに。

 

【Step1】離職票を入手する

ハローワークで求職の申し込みをする前に、前職の人事部から「離職票」を入手しましょう。

求職の申込みをする際に、持参する必要があるからです。

失業手当の給付日は、ハローワークへの申込日から計算されます。(退職日ではありません)

申込みが遅れると、給付を受ける日も遅れます。

離職票を入手したら、早めにハローワークに申し込みに行きましょう。

 

 ポイント① 離職票を早く貰う方法

前職を退職する時に、人事に「失業手当を受給する予定である旨」を伝えておくと、早めに離職票を出してもらえる可能性があります。

 ポイント② 前職の就業期間が1年以内の場合

この場合、「更にもう一つ前の前職の離職票」も必要になります。こちらは直接会社に連絡し、再発行をお願いしましょう。

 

【Step2】ハローワークで、求職の申し込みをする

  • 日付:1/1
  • 場所:最寄りのハローワーク
  • 所要時間:1時間30分
  • 持ち物:
    ① 離職票
    ② 印鑑
    ③ 写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
    ④ 銀行キャッシュカード又は通帳
    ⑤ マイナンバーの分かる証明書
    ⑥ 本人確認書類
  • やる事:ハローワークへの登録手続

※ 詳しくは、最寄りのハローワークHPをご参照ください。

所要時間は1時間30分ほど(込み具合により、多少前後する)かかるようです。

「離職票」以外に、特別に外部から取り寄せる書類などはありません。

 

【Step3】ハローワークで、就職活動ガイダンスを受講する

  • 日付:1/8~22
  • 場所:最寄りのハローワーク
  • 所要時間:1時間
  • 持ち物:登録時に渡された資料・筆記用具
  • やる事:就活に関するセミナーを受講

就活ガイダンスを受講します。

特に必要な書類などはありません。

 

【Step4】ハローワークで、雇用保険受給説明会を受講する

  • 日付:1/8~22
  • 場所:最寄りのハローワーク
  • 所要時間:1時間30分
  • 持ち物:登録時に渡された資料・筆記用具
  • やる事:失業手当の制度について説明を受ける

Step3とほぼ同様ですが、こちらもハローワークに行き、説明を受ける必要があります。

なお、日時は原則として変更できません。

 

【Stp5】ハローワークで、就職活動実績の認定を受ける(初回)

  • 日付:1/29
  • 場所:ハローワーク
  • 所要時間:5分
  • 持ち物:ハローワークカード
  • やる事:窓口で認定を受けるだけ。

求職活動実績の認定(初回)までの間に、求職活動を1回しなければなりません。

ただし、「【Step4】雇用保険受給説明会」の受講自体が求職活動であると認定されますので、この時点では他に求職活動を行っている必要はありません。

次回の認定からは、その他の求職活動実績が必要となります。

 ポイント③ 受給総額がこの時点で分かる

失業保険の受給総額がこの時点で決定しているため、合計いくら貰えるのか教えてもらうことができます。

 

【Step6】ハローワークで、就職相談を受ける(月2回)

  • 日付:1/29~5/21
  • 場所:ハローワーク
  • 所要時間:5~15分
  • 持ち物:ハローワークカード
  • やる事:窓口で就職相談をする

初回の認定は「【Step4】雇用保険受給説明会」の受講で済みましたが、その後は実際に「就職活動」を行わなければなりません。

ハローワークから「就職活動である」と認められる行為は、限定列挙されています。

 「就職活動」と認められる行為

  1. 雇用保険受給説明会(初回のみ)
  2. ハローワークで就職相談をする(※認定日前日までに済ませる)
  3. ハローワークが開催する就職セミナーに参加する
  4. 許可や届出のある民間事業者が実施するセミナーに参加する
  5. 公的機関が行う職業相談や各種講習、セミナーを受講する
  6. 各種国家試験や検定などの資格試験の受験(受験票など試験日と氏名が記載されたものを持参)
  7. 職業訓練校に応募する

(引用:Paranavi

このうち、最も時間を要しないと考えられるのが ②の「就職相談」です。

ネットを見てみると、「15分で終わった」「5分で終わった」という声がチラホラ…。

要約すると、ハローワークのPC上で求人を調べ、就職の意思を見せる活動です。

これで「求職活動である」と認められます。

なお、日付は特に指定されませんので、(1月以内の)好きな日に2度足を運びましょう。

 

【Step7】ハローワークで、就職活動実績の認定を受ける(月1回)

  • 日付:2/26、3/26、4/23、5/21
  • 場所:ハローワーク
  • 所要時間:5分
  • 持ち物:ハローワークカード
  • やる事:窓口で認定を受けるだけ。

毎月1回認定日がありますので、必ず認定を受けに行く必要があります。(受け忘れても問題はありませんが、失業手当の給付が1ヶ月遅れます)

 ポイント④ 同日に「就職相談」すると効率的

職業相談も認定も、どちらもハローワークで行いますので、同日に行うと(何度も足を運ぶ必要がなく)効率的です。

 

【Step8】失業手当の給付を受ける(振込)

  • 日付:3/30、4/27、5/25

給付期間が90日の場合は、3ヶ月に分けて支給されます。

事前に登録した銀行口座に振り込まれるため、特に何もする必要はありません。

これで失業手当の給付は完了です。

 

会計士の失業保険受給まとめ

まとめです。

  • 会計士でも失業保険を受け取ることは可能
  • 独立する際に要件を満たす可能性あり
  • 手続はさほど難しくない

なお、独立する際は「監査法人での非常勤」をするのが一般的ですが、非常勤をしながらの受給はできません。

監査法人の非常勤なら、日当5万円ほど貰えますので、月4日間働けば失業保険と同額になります。

会計士なら簡単に稼ぐ事ができますから、手続きが面倒な方は、非常勤バイトを探されると良いですよ。