公認会計士・税理士の藤沼です。
「会計士は失業手当(失業保険)が貰えない」
そう思っている方が多いようです。
そこで今回は、私たち会計士が失業手当を受けるための要件・方法をご紹介します。
特に「独立を考えている会計士」の方にとっては、役立つ情報だと思います。
会計士が失業保険を得るための「要件」
そもそも失業保険とは、「失業した人が 1日も早く就職するための給付制度」です。
そのため、次のような給付要件が設定されています。
失業保険を得るための一般要件
- 積極的に就職しようとする意思があること。
- いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること。
- 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと。
上記のほか、「離職前2年間で、計12ヶ月以上の被保険者期間」が必要など、やや細かな要件(多くの人が当てはまる)が設定されています。
申請の際は、必ず厚生労働省HPをご確認ください。
「公認会計士登録」をしていても、失業手当は受けられる
結論から言えば、平成25年から制度が変更され、問題なく受給できるようになりました。
厳密には地区によりますが、たとえば東京都青梅市のハローワークHPでは、以下のような記載がされています。
公認会計士、税理士、弁護士、弁理士などの資格を持つ方は、法律の規定に基づき、名簿や登録簿などに登録している場合であっても、開業や事務所に勤務している事実がないことが確認でき、要件を満たしていれば、雇用保険の受給資格決定を受けることができます。
というわけで、公認会計士であることのみをもって失業手当が受給できない、という訳ではありません。(雇用保険を支払っているので当然ですが)
公認会計士が失業手当を受けるシチュエーション
あくまで、想定されるシチュエーションのお話です。
たとえば、独立のために会社を辞めた会計士なら、次のようなケースが想定されます。
- 会社を辞めたが、独立のノウハウを得るために一時的な就職を考えている
- 独立のために会社を辞めたが、資金不足のため再就職を考え始めた
勢いで会社を辞め 独立したものの、「会計事務所運営のノウハウ」が無いため、会計事務所などへの再就職を考えるケースは想定されます。
特に 監査法人からいきなり独立された方は、「どうやって事務所を運営するのか」「サービスラインはどのようなものがあるのか」等、競合リサーチをしたいはず。
上記のようなシチュエーションなら、「積極的な就職の意思」があり「現在職業に就いていない」ため、受給要件に該当します。
自分の事務所を持っているのですから、当然ですね。(参考:起業家バンク)
あくまで開業届を提出する前のお話です。(なお、「公認会計士登録」という意味での「開業」とは違います)
会計士は失業保険をいくら貰えるのか?
失業保険の支給総額は、次の算式により算出されます。
① 基本手当日額
「1日あたりの手当」です。(日当のようなもの)
日額には上限があり、私たち会計士の場合は(よほどのことが無い限り)上限のMAXを受給できるでしょう。
基本手当日額の上限(令和2年8月1日現在)
年齢 | 基本手当日額の上限 |
---|---|
30歳未満 | 6,845円 |
30歳以上45歳未満 | 7,605円 |
45歳以上60歳未満 | 8,370円 |
60歳以上65歳未満 | 7,186円 |
(引用:ハローワークインターネットサービス)
② 給付日数
日額を給付してもらえる日数です。
ここでは、「自己都合」かつ「65歳未満」を想定したケースでご紹介します。
給付日数
離職時の年齢 | 雇用保険の加入期間 | ||
---|---|---|---|
10年未満 | 10年~20年未満 | 20年以上 | |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 15日 |
たとえば私を例にすれば、前々職(EY)と前職(会計事務所)で合計5年半ほど雇用保険に加入していましたので、「10年未満」となり、給付日数は90日となります。
③ 支給総額(一般的なケース)
仮に私が失業保険を受給した場合、支給総額は次のようになります。
結構大きいですね。
なお、この手当は一度に貰えるわけではなく、3ヶ月(28日)に分けて給付されます。
受給までの流れは次項で解説しますが、さほど手間がかからないため、(失業保険の受給要件を満たす方は)検討すべき金額だと思います。
会計士が失業保険を受けるまでの「流れ」
以下、会計士が失業保険を受けるまでの「流れ」を解説します
また、本文中の日付は目安です。
数日~数週間前後する可能性がありますので、ご参考までに。
【Step1】離職票を入手する
ハローワークで求職の申し込みをする前に、前職の人事部から「離職票」を入手しましょう。
求職の申込みをする際に、持参する必要があるからです。
申込みが遅れると、給付を受ける日も遅れます。
離職票を入手したら、早めにハローワークに申し込みに行きましょう。
ポイント① 離職票を早く貰う方法
ポイント② 前職の就業期間が1年以内の場合
【Step2】ハローワークで、求職の申し込みをする
- 日付:1/1
- 場所:最寄りのハローワーク
- 所要時間:1時間30分
- 持ち物:
① 離職票
② 印鑑
③ 写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
④ 銀行キャッシュカード又は通帳
⑤ マイナンバーの分かる証明書
⑥ 本人確認書類 - やる事:ハローワークへの登録手続
※ 詳しくは、最寄りのハローワークHPをご参照ください。
所要時間は1時間30分ほど(込み具合により、多少前後する)かかるようです。
「離職票」以外に、特別に外部から取り寄せる書類などはありません。
【Step3】ハローワークで、就職活動ガイダンスを受講する
- 日付:1/8~22
- 場所:最寄りのハローワーク
- 所要時間:1時間
- 持ち物:登録時に渡された資料・筆記用具
- やる事:就活に関するセミナーを受講
就活ガイダンスを受講します。
特に必要な書類などはありません。
【Step4】ハローワークで、雇用保険受給説明会を受講する
- 日付:1/8~22
- 場所:最寄りのハローワーク
- 所要時間:1時間30分
- 持ち物:登録時に渡された資料・筆記用具
- やる事:失業手当の制度について説明を受ける
Step3とほぼ同様ですが、こちらもハローワークに行き、説明を受ける必要があります。
なお、日時は原則として変更できません。
【Stp5】ハローワークで、就職活動実績の認定を受ける(初回)
- 日付:1/29
- 場所:ハローワーク
- 所要時間:5分
- 持ち物:ハローワークカード
- やる事:窓口で認定を受けるだけ。
求職活動実績の認定(初回)までの間に、求職活動を1回しなければなりません。
ただし、「【Step4】雇用保険受給説明会」の受講自体が求職活動であると認定されますので、この時点では他に求職活動を行っている必要はありません。
次回の認定からは、その他の求職活動実績が必要となります。
ポイント③ 受給総額がこの時点で分かる
【Step6】ハローワークで、就職相談を受ける(月2回)
- 日付:1/29~5/21
- 場所:ハローワーク
- 所要時間:5~15分
- 持ち物:ハローワークカード
- やる事:窓口で就職相談をする
初回の認定は「【Step4】雇用保険受給説明会」の受講で済みましたが、その後は実際に「就職活動」を行わなければなりません。
ハローワークから「就職活動である」と認められる行為は、限定列挙されています。
「就職活動」と認められる行為
- 雇用保険受給説明会(初回のみ)
- ハローワークで就職相談をする(※認定日前日までに済ませる)
- ハローワークが開催する就職セミナーに参加する
- 許可や届出のある民間事業者が実施するセミナーに参加する
- 公的機関が行う職業相談や各種講習、セミナーを受講する
- 各種国家試験や検定などの資格試験の受験(受験票など試験日と氏名が記載されたものを持参)
- 職業訓練校に応募する
(引用:Paranavi)
このうち、最も時間を要しないと考えられるのが ②の「就職相談」です。
ネットを見てみると、「15分で終わった」「5分で終わった」という声がチラホラ…。
これで「求職活動である」と認められます。
なお、日付は特に指定されませんので、(1月以内の)好きな日に2度足を運びましょう。
【Step7】ハローワークで、就職活動実績の認定を受ける(月1回)
- 日付:2/26、3/26、4/23、5/21
- 場所:ハローワーク
- 所要時間:5分
- 持ち物:ハローワークカード
- やる事:窓口で認定を受けるだけ。
毎月1回認定日がありますので、必ず認定を受けに行く必要があります。(受け忘れても問題はありませんが、失業手当の給付が1ヶ月遅れます)
ポイント④ 同日に「就職相談」すると効率的
【Step8】失業手当の給付を受ける(振込)
- 日付:3/30、4/27、5/25
給付期間が90日の場合は、3ヶ月に分けて支給されます。
事前に登録した銀行口座に振り込まれるため、特に何もする必要はありません。
これで失業手当の給付は完了です。
会計士の失業保険受給まとめ
まとめです。
- 会計士でも失業保険を受け取ることは可能
- 独立する際に要件を満たす可能性あり
- 手続はさほど難しくない
なお、独立する際は「監査法人での非常勤」をするのが一般的ですが、非常勤をしながらの受給はできません。
監査法人の非常勤なら、日当5万円ほど貰えますので、月4日間働けば失業保険と同額になります。
会計士なら簡単に稼ぐ事ができますから、手続きが面倒な方は、非常勤バイトを探されると良いですよ。