公認会計士・税理士の藤沼です。
BIG4で約5年働きましたが、激務によるストレスから別会社に転職しました。
今は独立して法人運営をしており、空いた時に中小監査法人で非常勤職員として関与しています。
あの時の苦労は、一体何だったんだろうか…? と、今も感じます。
そこで本記事では、「中小監査法人が意外とおすすめな理由」など、私の体験をもとにお話します。
最後のほうでは、内緒で良い求人をご紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
想定読者
- 中小監査法人への転職を考えている会計士の方
目次
中小監査法人と大手監査法人の違い

「中小監査法人は年収が低い」
そんな誤解もあるようですので、念のため、BIG4との比較表を再掲します。
中小監査法人 | 大手監査法人 | |
---|---|---|
法人規模 | 5~1,000名 | 3,000~6,000名 |
非常勤職員 | 多 | 少 |
クライアント | 小~大 | 中~大 |
海外展開 | 小規模 | 大規模 |
残業時間 | ピンキリ | 多 |
年収 | 高 | 高 |
年齢層 | やや高め | 幅広 |
監査品質 | 中 | 高 |
調書 | 紙 | 電子 |
年収については、大手監査法人を上回るケースもあります。
そのほか中小監査法人の概要については、「中堅・中小監査法人の『年収』と『働いてみた感想』」の方で詳細にお話しています。
ここまでは一般的なお話です。
ここから先は、私が実際に働いた経験も踏まえ、中小監査法人に転職するメリット・デメリットをお話します。
中小監査法人に転職するメリット

結論から言えば、中小監査法人でのメリットは大手監査法人よりも大きいと感じます。
私は、大手・中小のどちらも経験しました。
その上で、中小監査法人に次のようなメリットを感じました。
中小監査法人に転職するメリット
- ムダな作業が少ない
- ワークライフバランスが充実しやすい
- マネージャー職へ昇格しやすい
- キャリアが広がりやすい
- 副業を推奨しているケースがある
参考として、大手監査法人との比較表も載せておきます。
中小監査法人 | BIG4 | |
---|---|---|
ムダな作業 | 少ない | 多い |
ワークライフバランス | 良い | 悪い |
昇格 | 早い | 遅い |
その後のキャリア | 広い | 狭い |
副業 | 推奨傾向 | 限定的 |
どれも私が体感したメリットです。
以下、かんたんに紹介します。
① ムダな作業が少ない

中小監査法人で働いてみて、最も強く感じたメリットです。
BIG4では 海外ファームの要請により、膨大なバウチングを求められたり、大量の(監基報の要求事項を満たすための)文書化作業を求められたりします。
中小監査法人では、このような(ある種、ムダとも思える)作業が発生しません。
なぜなら 海外の大手ファーム(BIG4)に属さないため、要求事項が少ないのです。
中小監査法人に転職すると、「少ない人員でいかにコスパの高い監査を行えるか」が求められます。
公認会計士として「怪しい」と感じる部分に注力した手続を遂行できるので、監査人としての嗅覚・勘所が養われます。
② ワークライフバランスが充実しやすい

中小監査法人は ムダな作業が少なく、利益率の高いビジネスモデル(※)のため、ワークライフバランスが充実しやすいというメリットがあります。
※ BIG4と比較した場合。
もちろん、監査法人の方針や、代表社員の性格にもよるでしょう。
しかし、ワークライフバランスが整っている(残業が少ない)監査法人は 意外と多いのです。
以前は「監査法人=激務」というイメージでしたが、実際働いてみると、そのイメージはガラッと変わりました。
なお、「ワークライフバランス重視の監査法人」は、ネットで探してもあまり出てきません。
その理由は「クライアントの目があるから」そして「仕事をしない人が集まってしまうから」です。
残業の少ない監査法人を探している方には、下記でホワイトな監査法人の求人情報もご紹介しています。
③ マネージャー職へ昇格しやすい

そんな方は、中小監査法人がオススメです。
たとえば、中小の監査法人アヴァンティアのパートナー陣は、とても若いですよね。
中小監査法人パートナー 一覧

https://www.avantia.or.jp/company/partners.html
中小監査法人には、30代のパートナーがわりと多いです。
BIG4だと早くても40代(かつ、非常に狭き門)ですから、中小監査法人は昇格がしやすい、と言えるでしょう。
昇格が早ければ、その分、公認会計士として多くの経験を積めます。
その経験は、社外からも高く評価されるはずです。
「早くキャリアアップして、社外から評価される経験を積みたい」
という方には、中小監査法人がおすすめです。
④ キャリアが広がりやすい

中小監査法人では、経営指導やFASコンサルに携わるケースがあります。
その理由は、(BIG4のクライアントに大会社等が多いのに対して)中小監査法人のクライアントには、比較的小規模なクライアントがある為です。
規模の小さなクライアントには、「経営指導」「アドバイザリー」等のニーズもあり、監査法人として2項業務を提供できるケースがあります。
そして 監査+アドバイザリーという経験は、その後のキャリア形成に大きく役立つでしょう。
監査法人なら 教えてくれる人がいますから、環境的にも恵まれています。
⑤ 副業を推奨しているケースが多い

中小監査法人では「副業」を認めるケースがあります。
それどころか、私の契約先の監査法人では 副業を「推奨」していたりします。
そのため、ご自分の会計事務所を運営されている方もいます。(私もその一人)
様々な仕事をしている方が多いので、非常に視野が広がります。
私が今でも監査法人で(非常勤として)働いているのは、「様々な人たちと知り合えるから」だったりします。
中小監査法人に転職するデメリット

中小監査法人で働くメリットは大きいですが、デメリットも事前にしっかりと知っておきましょう。
デメリットは3つ
- 風土が合わないと、辞めざるを得ない。
- 細度の高い監査実務からは遠ざかる。
- 法人によって、出張の多いケースがある。
① 風土が合わないと、辞めざるを得ない。

最大のデメリットです。
中小監査法人は、クライアント数・従業員数が少ないため、基本「チーム変更」が難しいです。
このリスクを回避するには、「事前調査」がとても重要です。
事前に内情を調査しておくことで、転職の失敗リスクを低減させてください。
詳しくは後述します。
>>中小監査法人への転職方法へジャンプ
② 細度の高い監査実務からは遠ざかる

メリットの裏返しです。
中小監査法人では「厳格な監査」に触れる機会が減ります。
中小監査法人で働いていると、「あるべき論」に触れる機会が少なく、不安を感じるケースもあるでしょう。
そのため「一生監査で食べていきたい」という方は、(個人的には)BIG4での監査経験も必要だと感じます。
ただし、(厳格な)監査スキルを活かすことができるシチュエーションは「監査」だけです。
その後、コンサルや事業会社などに転職した際は、役立つケースが少ないのです。
「一生 監査人として働く」という方でなければ、必ずしもBIG4で働く必要はありません。
③ 法人によって、出張が多いケースがある

出張が苦手な方は、注意してください。
小さな規模の監査法人では クライアントを選ぶことができず、地方クライアントを多く抱えるケースがあります。
出張が増えると、お酒の場も増える可能性があります。
「出張が苦手」「会食が苦手」という方は、ご注意ください。
とはいえ、こちらは事前に対策することが可能です。
事前にクライアントを知ることで、出ある程度、張の多さは予測がつきます。
入ってから「失敗」では遅いですから、事前調査をおすすめします。
>>マイナビ会計士なら、無料でパンフレットを入手できます。
中小監査法人への転職がおすすめの人

もし、あなたが次に該当するのなら、中小監査法人への転職をおすすめできます。
中小監査法人がおすすめの人
- 命令されるのではなく、自ら考えて仕事をしたい人
- 殺伐とした環境が苦手な人
- 「公認会計士として」キャリアアップしたい人
① 命令されるのではなく、自ら手続きを考えたい人

中小監査法人では、(大手のような)細かな手続きまで求められることがありません。
自ら本質を考え、常に全体を見渡して仕事ができますので、スキルアップが非常に速いのです。
(BIG4では 細かく地味な作業が多いですから、近視眼的になりやすく、全体が見えなくなることも多いでしょう。)
「実のある仕事をしたい」という方は、中小監査法人への転職がおすすめです。
② 殺伐とした環境が苦手な人

私は 中小監査法人で働いてみて、BIG4とは比較にならない程の「働きやすさ」を強く感じました。
中小監査法人は、良い意味で「同僚の顔が見える」距離にあります。
つまり、誰がどのくらい働いているのか分かるため、お互いに助け合うことができるのです。
もちろん 中小監査法人では細かな作業が少ないため、「精神的ストレスが溜まりづらい」というのも要因の1つです。
そのため、殺伐とした職場が苦手な方には、中小監査法人はとてもオススメです。
③ 「公認会計士として」キャリアアップしたい人

「会社員として」キャリアアップしたい方は、BIG4の方が良いかもしれません。
しかし「公認会計士として」キャリアアップしたい方は、中小監査法人がおすすめです。
また、開業している会計士仲間も多くいますから、常に「公認会計士として」刺激を得られる環境にあります。
独立も含めた、様々なキャリアに繋げることができるのが、中小監査法人なのです。
中小監査法人に転職する際の「注意点」

必読です。
もし、すでに中小監査法人へ転職を考えているのなら、次の点に注意してください。
注意点
- 必ず、行政処分の状況を調べておく。
- 必ず、非常勤職員の割合を調べておく。
- クライアントリストを入手する。
「注意点」と「対応策」を、解説します。
① 行政処分の状況
転職前に、必ず直近の行政処分の状況を確認してください。
(参照:金融庁Web)
金融庁より行政処分を受けると、法人の環境はめまぐるしく変わります。
規模の小さな中小監査法人の場合、個人への負担がよりキツくなること、想像に容易いです。
行政処分(業務改善命令)が下ると、基本的には
- 新たな手続を計画
- 会社にネゴる
- 強化した追加手続を実施
といったフローが生まれます。(とてもシンプルに書きましたが…全社でこれをやるので非常に大変です。)
また 過去に処分を受けている場合は、今後も処分を受ける可能性が高いとも言えます。
「求人票」には行政処分について記載がないケースもありますので、応募前に金融庁HPを確認しておきましょう。
② 非常勤職員の割合
監査未経験の方は、必ず確認してください。
非常勤職員が多く、正規職員の割合が少ない場合、現場で「ほったらかし」にされる可能性があります。
仕事を教えてくれるわけではなく、そのような立場にもありません。
また、正規職員の割合が低いということは、ごく少数の人間で経営を支配しているという事です。
こうなると個人の主観で業務を振り回される可能性があり、これは行政処分でも度々問題になっています。(参照:清流監査法人の行政処分について)
社員(パートナー)の性格が色濃く出ますから、その意味でも、リスクがあると言えるかもしれません。
このようなリスクを軽減するためにも、監査法人のパンフレットなどを入手し、非常勤職員の割合も知っておくべきです。
>>マイナビ会計士なら、無料でパンフレットを入手できます。
③ クライアントリストを入手する
「デメリット」の項目でもお話したとおり、中小監査法人によっては、出張クライアントが多いケースがあります。
通勤時間は給料が出ませんから、ある種、サービス労働ともいえるでしょう。
もちろん、面接時にある程度「家から近いクライアントにしてほしい」と交渉することはできますが、そもそも家から近いクライアントがなければ 交渉の余地もありません。
このようなリスクを回避するためにも、監査法人のパンフレットを入手しておく必要があります。
わざわざ本社へ行って入手するのが面倒な方は、転職エージェント経由で入手されると効率的です。
>>マイナビ会計士なら、無料でパンフレットを入手できます。
中小監査法人への「効率的な」転職方法

中小監査法人の数は、実に 200社以上あります。
この中から魅力的な求人を探すには、多くの手間がかかるでしょう。
ここでは 中小監査法人への転職方法として、3つのポイントをご紹介します。
中小監査法人への転職ポイント
- 転職エージェントから求人を入手
- 内情をリサーチ
- 知人から紹介してもらう
① 転職エージェントから求人を入手
小さなエージェントを選ぶと、応募できる法人が限定されます。
会計業界に詳しくないエージェントを選ぶと、企業の内情を正しくリサーチできません。
転職に失敗しないためにも、「マイナビ会計士」など大手転職エージェントを利用すべきです。
登録をすると、転職エージェントから非公開求人を入手できます。
下記リンクより無料で利用できますので、今すぐ登録することをオススメします。
② 内情をリサーチ
転職で失敗しないためには、内情のリサーチも重要です。
理想的な求人票を入手したら、応募前に、必ずリサーチして下さい。
リサーチ手法は2つ
- 転職エージェントのアドバイザーから情報入手
- 口コミサイトを閲覧
まずは登録した転職エージェントから、内部事情をヒアリングしましょう。
各アドバイザーは、各企業と直接関わりのある人物ですから、(OB訪問ほどではないものの)企業の内情を細かく知ることができます。
それでも分からなければ、口コミサイトも閲覧してみましょう。
私の個人的なオススメは、「OpenWork」という口コミサイトです。
すべてを閲覧するには少し手間(情報入力など)が要りますが、信ぴょう性は非常に高いと感じます。(私の退職した会社の口コミを見てみても、わりと正しい内容が記載されていました。)
もし、こちらで1つでも悪い口コミがあったら、要注意です。
なぜなら、このようなサイトでの悪い口コミ(ある種、誹謗とも取れる表現)は、書き込んだ本人にもリスクが及ぶためです。(中小なら尚更、本人特定されやすい。)
もちろん、どんな会社にも不満は付き物ですが…。
③ 知人から紹介してもらう
エージェント経由での転職のほかに、オススメなのが「知人会計士からの紹介」です。
内情を知っている人からの紹介は、かなり信ぴょう性が高いでしょう。
先述のとおり、かなりホワイトな監査法人なのでオススメです。
【限定】ホワイトな中小監査法人の転職求人

宣伝になりますが、当記事をご覧いただいた方だけに、私が契約している中小監査法人をご紹介します。
実際に働いてみて、かなり良い法人だと感じたので、勝手にご紹介させていただきます。
法人概要
項目 | 概要 |
---|---|
所在地 | 東京都 |
歴史 | 50年以上 |
行政処分 | 設立以来なし |
職員 | 50~100名規模 |
年収 | BIG4と同程度 |
非常勤割合 | 低い |
残業時間 | 少ない |
離職率 | 非常に低い |
ポイントは離職率。
監査法人としては非常に珍しいですが、居心地がよく、人が辞めないのが特徴です。
職員全体として、「あまり残業をしたくない」という共通意識があり、採算性の良いクライアントだけを保持しています。
バリバリ残業したい方には不向きですが、ご興味のある方には こっそりご紹介させていただきます。
>>お問い合わせフォーム
中小監査法人に強い転職エージェント

転職エージェントは数多くありますが、
中小監査法人を探すのであればマイナビ会計士1択です。
ちなみに、私は20社のエージェントを使いましたが、マイナビ会計士のみで十分と感じました。
とはいえ、やはり一番大切なのは「優秀な担当アドバイザーを見つけること」です。
転職は、人生の選択です。
少しでも「違和感」を感じたら、気にせず担当者を変えて良いと思います。
ぜひ選択を間違わないよう、相性の良いアドバイザーを探してくださいね。