公認会計士・税理士の藤沼です。
32歳で監査法人から転職し、33歳で独立しました。
今回は、私の転職体験・同僚会計士へのインタビューを元に、30代会計士の転職についてお話します。
※ 私はキャリアのプロではありませんので、あくまで1つの参考資料として、読んでいただけたら幸いです。
目次
30代で監査法人から転職する会計士は非常に多い

30代で転職する人は、どのくらいいるのか?
その統計データが存在します。
監査法人からの転職時の年齢

(引用:組織内会計士ネットワークのアンケート調査)
具体的には、30~35歳で転職する会計士が35%、36~40歳で転職する会計士が16%です。
※ この割合は、転職した会計士に対する割合です。
なお参考までに、監査法人を辞めた際の「実務経験年数」についてもアンケート結果があります。
転職時の監査法人での経験年数

5年以内に監査法人を辞める会計士が(全転職者の)約43%です。
また約8割の会計士が、10年以内に辞めているようです。
30代の会計士におすすめの転職先

会計士の転職先は全12種あります。
ここでは私の転職経験とインタビューをもとに、大きく4つのニーズに分けて転職先をご紹介します。
4つのニーズ
ちなみに私自身の職歴を少しお話すると、
- EY新日本有限責任監査法人4年半
- FAS系の会計事務所1年弱
- 独立(3年目)
という職歴です。
① やりがい・スキルアップ重視
やりがい又はスキルアップを重視される方には、次の転職先がオススメです。
- FAS
- BIG4のアドバイザリー
- 税理士法人
- 会計事務所
- ファンド、投資銀行
私たち会計士が得られる「会計・監査以外の専門的スキル」は、大きく「ファイナンス」と「税務」の2つに分けられます。
このいずれか(又は両方)を経験できるのが、上記の転職先です。
ただ、一点だけご注意ください。
これについては後述しています。
FAS
FASは、会計士としての「やりがい」を大きく感じる転職先です。
なぜなら会計士業界でのコンサルと言えば、まずFASを指すからです。
FASにも種類がありますが、財務DD及びバリュエーション業務であれば、会計士の専門性をすぐに活用できるため、即戦力として働くことができます。
中堅FASであればクライアント規模が小さくなり、更にクライアントの距離を近く感じます。
ただし、FASは全体として忙しい(激務な)業界です。
やりがいはあるため監査の忙しさとは質が異なりますが、この点は覚悟すべだと思います。
BIG4のアドバイザリー
BIG4でもFASを提供しており、最先端のFASを知りたければBIG4一択だと思います。(後述しますが、一応投資銀行でも最先端を知ることはできます)
中堅以下の組織はどこもそうですが、「大手がどのような処理を行うのか」という知見は非常に重宝されます。
こちらも非常に激務ですので、「定年まで勤める」という方にはオススメできませんが、やりがい・ファイナンスのスキルアップを目的とされる方にはオススメです。
税理士法人
「法人税務」の専門性を高めたいのであれば、税理士法人がオススメです。
FASとは違い「やりがい」を大きく感じるフィールドではありませんが、法人クライアントに係る税務スキルは高いレベルで身に付きます。
監査法人+税理士法人での経験により、法人の会計・税務の専門性を高めることができるため、例えば上場会社経理マネージャーのポジション等のキャリアが開かれます。
会計事務所
会計事務所では、FAS及び税務(個人クライアントを含む)に幅広く触れます。
ただし 「税理士」が所長の会計事務所では、税務しか扱わないケースもあるためご注意ください。
FASや小さな税理士法人よりも更にクライアント規模が小さいため、クライアントへの貢献度合いを強く実感できるのも特徴です。
大手監査法人のような、プロジェクトのダイナミックさはありませんが、小規模ゆえの面白味があります。
ファンド、投資銀行
ファンド及び投資銀行では、ファイナンスの専門性を身につけることができます。
年収水準も非常に高く、ファイナンスの分野では1つの「ゴール」と見ることができますが、かなりの激務です。(一部ファンドを除く)
なお、ファンド及び投資銀行への転職のハードルは非常に高く、30代中盤での採用率はかなり低いようです。
特にファンドでは前職にファイナンス関連の経験がなければ、書類通過さえも難しいため、誰でも転職できるわけではありません。
② ワークライフバランス重視
ワークライフバランスを重視するのであれば、オススメは次の2つの転職先です。
- 経理
- 中小監査法人(一部)
なお ワークライフバランスを重視した転職先については、「ワークライフバランスを取り戻せる会計士の転職先と、その探し方」で詳しく解説していますので、こちらもご参考ください。
経理
全転職先の中で、最も残業時間が少ない傾向にあるのが 経理です。
残業時間は、繁忙期以外なら月5~10時間程度という会社も多く、公私ともに安定しやすいでしょう。
また、経理では監査法人での経験を高く評価されやすく、監査経験をフルに活用できる転職先です。
中小監査法人(一部)
大手監査法人で働いていると、監査=激務 というイメージが定着しがちです。
しかし、それはBIG4に限った話であり、中小監査法人では必ずしも激務ではありません。
なぜここまで断言できるのかと言うと、私が今契約している監査法人が正にそうだからです。
実際に働いてみて驚きました。
ここまでWLBの取れた監査法人は少ないと思いますが、探せば必ずあります。
③ 会計事務所として独立志向がある
現に私自身も会計事務所を運営していますが、「もう少し会計事務所を経験すれば良かった」と強く実感しています。
会計事務所での経験・スキルは、将来の自分の事業に直結します。
また、会計事務所は基本的に組織規模が小さいため、比較的早い段階から経営に関与できる可能性があり、組織運営の知見が身に付く点もポイントです。
④ とにかく今の監査法人を辞めたい
「とにかく今の監査法人を辞めたい」という方には、次の転職先がオススメです。
- 経理
- FAS
- 中小監査法人
この3つの転職先は、転職先を見誤るリスクが低い(又は、見誤ったとしても失敗するリスクが低い)転職先だからです。
経理
経理は、「監査法人での労働時間の多さに疲れた」という方にオススメです。
ベンチャー経理などを除けば、上場経理は毎月のルーティンワークがある程度決まっています。
突発事項がない限り、毎月の残業時間を予測しやすく、「実際に入ってみたら忙しかった」というリスクが低いのです。
FAS
FASは、「監査以外の経験がしたい」という方にオススメです。
FASではファイナンスのスキルを身に付けることができるため、会計士としてキャリアの幅を大きく広げることができます。
財務DDを足掛かりに、バリュエーションやPMIなど、よりファイナンス色の強いフィールドでのキャリアアップが期待できます。
中小監査法人
「特にやりたいことは無いが、とくにかく大手監査法人を辞めたい」という方には、中小監査法人をオススメしたいです。
私は大手監査法人と中小監査法人の両方を経験しましたが、良い意味で、全く環境が違うと感じました。
中小監査法人に転職すると、大手での経験がフル活用されます。
特に「大手での最新の監査ロジック」は、中小において非常に重宝されます。(準大手監査法人はまた別かもしれませんが)
大手で培った最新の監査メソッドを、中小で活かすのも大いにアリです。
30代の会計士が転職時に考えるべきこと

私は慎重すぎる性格故、転職までに1年もかかってしまいました。
その時に知った知見や悩み、その後転職してみて分かったことをお話したいと思います。
30代の会計士が転職時に考えるべきこと
- 方向性をある程度考えておく
- 30代後半では即戦力が求められやすい
- 最悪、30代までなら5回まで失敗できる
① 方向性をある程度考えておく
30代会計士の求人はとても多く、市場価値は非常に高いです。
しかし40代になると求人が一気に減り、先述のとおり、転職する会計士は1割程度にまで減少します。
「辞めたくても辞められない」という状況が、最悪のケースとして想定されます。
先述のとおり、大きな方向性としては「会計」「監査」のほかに「FAS」「税務」があります。
しかし、何もそれらの道を究める必要はありません。
2つの専門スキルを掛け合わせることで、個人としての希少価値が高まるからです。
必ずしも、今決めた専門性1本で生きていくわけではありません。
再び転職をする可能性も十分ありますから、「大まかな方向性」だけでも決めておくと良いと思います。
② 30代後半では、即戦力が求められやすい
新しい武器を手に入れるなら、30代前半までが1つの目安です。
なぜなら30代後半になると、即戦力としての採用が求められるからです。
もちろん30代後半でも新たな挑戦はできるのですが、かなり業種が限定されると思います。(会計士・税理士の多い環境であれば、理解されやすい風潮があります)
③ 最悪、30代前半なら5回まで失敗できる
会計士は少し特殊なようで、転職回数が5回程度までなら、経歴としてさほどマイナスに見られないようです。
確かに、私自身転職をしてみると、自分よりも転職回数の多い会計士はたくさんいました。
もちろん失敗はできる限り避けたいですが、(少なくとも経歴面では)転職回数はそこまで問題にならないため、転職への前向きなマインドが大切だと思います。
30代会計士の転職難易度

30代の会計士にとって、転職難易度はとても低いです。
ご存じのとおり、大手監査法人では人手不足の傾向がありますが、会計士の転職市場においてはその傾向が更に強いのです。
私がレアケースなのではなく、他の記事でインタビューさせて頂いた会計士陣も、漏れなく同様の回答でした。(投資銀行・PEファンドへ転職された方だけは別ですが)
市場での需要が高い今が、年収を大きく上げるチャンスでもあります。
30代会計士にオススメの転職エージェント
30代 会計士にオススメの転職エージェント Top 3
私が転職した際は、マイナビ会計士を利用しました。
唯一の会計士専門エージェントであり、求人数が最も多く、たくさんの選択肢を提供してもらえたからです。
他にも計20社近くのエージェントを使ったのですが、結局、サービスの良さからこの1社に落ち着きました。
誤った転職エージェントを選ぶと、転職に失敗するおそれがあります。
ぜひ正しいエージェントを選び、最適なキャリアを見つけてくださいね。