公認会計士・税理士の藤沼です。

今回は、「内部監査」に転職した会計士のお話です。

実際に転職された会計士にインタビューを行い、キャリア・働き方をリサーチしましたので、転職後のイメージになれば幸いです。

この記事を書いた人

藤沼 寛夫

藤沼 寛夫

35歳
公認会計士・税理士

2014年  2月 EY新日本監査法人 入社
2018年  7月 FAS系コンサル事務所 入社
2019年10月 藤沼会計事務所 開業
2020年  4月 税理士登録

情報インタビュイー

nonoさん

nonoさん

37歳
公認会計士

2008年  2月 EY新日本監査法人 入社
2014年10月 外資系上場企業(内部監査) 入社

 

会計士が内部監査に転職したときの年収

会計士が内部監査に転職したときの年収

会計士向けの求人(412件)を確認したところ、内部監査の求人は7件のみでした。(参照:ジャスネットキャリア

7件の採用時年収データは上記のとおりであり、平均値は下記のとおりです。

英語力平均年収
英語力が必須(4件)1,012万円
特に必要なし(3件)727万円
合計(7件)890万円

ご覧のとおり、英語力の有無で約300万ほど年収が変わります。

元々「内部監査」「J-SOX」に精通した人材は少なく、英語のできる会計士も少ないことから、需要過多となったものと推察されます。

一方、日本語のみ使用の内部監査部門での年収は、経理の年収とほとんど変わりません。

 

会計士が内部監査に転職したときの残業時間

会計士が内部監査に転職したときの残業時間

内部監査での残業時間は、一般的には少ないと言われています。

これは、内部監査が年間を通じて「計画に基づき実施する業務」であることから、ある程度スケジュールをコントロールしやすい点が理由に挙げられます。

またスケジュール的には、決算後の評価実施時期が繁忙期となるため、第2四半期後(3月決算なら11月頃)、決算後(3月決算なら5~6月頃)が忙しくなります。

その他、評価計画の策定・発見された不備への対応確認などの業務もありますが、比較的余裕をもって計画を立てることができるでしょう。

もちろん内部監査の人員や職員の内部監査への理解度、組織再編の多さにもよりますので、詳細は転職エージェント等に確認をしてください。

※  ご参考までに、たとえばインタビュイーのnonoさんの会社では、平時5~10時間/月繁忙期30時間/月の残業時間とのことでした。

 

内部監査(J-SOX)の業務内容

内部監査(J-SOX)の業務内容

ここでは、内部監査での業務内容を簡単にお話します。

会計士なら基礎知識はあると思いますが、軽く読んでいただくことで、実際の働き方をイメージできるでしょう。

なお、ここでは3月決算の会社を想定しています。

 

① 独立的評価の対象子会社・対象プロセスの選定

第2四半期終了前(7~8月頃)、年度における自己評価範囲を決定し、内部監査部門に共有します。

自己評価範囲の決定は通常、企業内のリスクマネジメントを担う部門が統括し、経理部門など決算財務報告に関わる部門と調整して行います。

自己評価範囲の決定・共有後、その中から独立的評価の対象とする範囲を、内部監査部門において検討・決定します(10月頃)。

自己評価を第2四半期と年度の2度に分ける場合は、独立的評価もそれに合わせて2回に分けて行うため、期中の情報(7月頃)をもって独立的評価の範囲を決定し、年度決算後に改めて検討することになります。

たとえば 独立的評価対象とする連結子会社については、当該会計年度の売上高等の財務数値を考慮して年度決算後(4月頃)に最終決定します。

 

② 独立的評価の実施

時期

内部監査部門による独立的評価は、自己評価完了後~有価証券報告書提出前までに行います。

年2回に分けて評価を行う場合は、第2四半期決算後に自己評価が完了した後の11月頃を目安として行い、その後、年度決算後に自己評価が完了した後の5月~6月初旬頃に行います。

方法

評価の方法に決まりはないですが、通常は手続書(RMCや質問する具体的内容・必要な証跡等をまとめた資料)を作成します。

その後、手続書に沿ってプロセス実施担当者へのインタビュー・資料閲覧等を行い、各プロセスが適切に履行されていることを確認します。

なお、通常インタビューは対面で行われますが、コロナ禍においてはリモートワークとなった企業が増えました。

今後もリモート対応が増えると想定され、リモートでは資料閲覧が困難となる状況に配慮し、「事前の書面質問によりインタビュー項目を絞る」「閲覧予定の資料を事前に提供してもらう」等のケアが必要となります。

 

③ 不備を発見した場合の対応

独立的評価によってプロセスの不備を発見した場合は、内部監査部門から被評価部門に対して、不備の内容・改善案を提示します。

この時に重要なのは、被評価部門との無用な言い争いや、改善案が非現実的で実施されない事態等を避けることです。

会計監査と同様の配慮ですが、「内部監査」では外部監査以上に言い争いに発展するケースが多く、十分な配慮が必要です。

なお、被評価部門における不備対応に時間を要するケースを想定し、年度決算を待たず、(可能なプロセスは)第2四半期決算後に評価を実施すると良いでしょう。

 

内部監査において会計士に求められるスキル

内部監査において会計士に求められるスキル

内部監査に転職する会計士には、主に次の2つのスキルが求められます。

  1. 決算財務に関する知識
  2. コミュニケーション能力
  3. その他、専門知識

 

① 決算財務に関する知識

内部監査というポジションで会計士を採用するニーズは、私たちが「決算財務」に精通している点です。

J-SOXの目的は「財務報告の信頼性」であり、会計知識がベースとなるため、その点で会計士にニーズが集まります。

また  特に決算財務報告プロセスについては、会計士が採用されやすい傾向にあります。

内部統制を理解するには企業の統制環境・取引慣行などを理解しなければなりませんが、「会計」や「決算財務」の面では会計士が即戦力となります。

 

② コミュニケーション能力

内部監査では、コミュニケーション能力が必要とされます。

なぜなら、内部監査では組織内の様々な部門との「情報共有」「協議」「調整」が必要だからです。

これらのコミュニケーションが必要とされるシチュエーションとしては、例えば次のケースが挙げられます。

  • 業務執行(担当)側による自己評価範囲の決定を、適時に共有してもらう
  • 自己評価プロセスが変更される場合、適時に修正情報を共有してもらう
  • 担当者への効果的なインタビュー
  • 独立的評価の実施にあたり、対象部署の繫閑をリサーチし、適切なスケジュールを決定する(重要

※「自己評価」とは、業務実施者サイドによる評価・モニタリング活動を言い、これにより内部監査が円滑化されます。

評価対象の部門から見れば、内部監査は非常に手間です。

なぜなら、自己評価の実施に加えて「監査法人」「監査役」「内部監査」など、本業以外の数々の監査に対応しなければならないからです。

すなわち「効率的に監査をしてほしい」というニーズが強く、監査の実施に先んじて、綿密なコミュニケーションが必要となるのです。

監査法人での外部監査以上に、コミュニケーションには気を使う必要があるかもしれません。

 

③ その他、専門知識

その他、当然ながら内部統制全般の専門知識が求められます。

会計監査をしていると、意外と内部監査(J-SOX)に疎くなっているケースもあります。

先述の業務内容のイメージがあまり湧かない方は、次の専門資格を取得されると、(間接的に)転職に有利になるでしょう。

 内部統制に関連した資格

  • 公認内部監査人(CIA、IIA認定国際資格)
  • 公認情報システム監査人(CISA、ISACA国際認定資格)
  • 不正検査士(日本公認不正検査士協会認定資格)

内部監査について全般的な復習をしたいのなら、公認内部監査人を取得するのが最も手っ取り早いです。

また  IT監査に特化した「公認情報システム監査人」、不正監査に特化した「不正検査士」も、専門性を高めるための選択肢として考えられます。

 

会計士が内部監査に転職するメリット・デメリット

会計士が内部監査に転職するメリット・デメリット

どんな転職にも、必ずメリット・デメリットがあります。

メリット・デメリットを比較し、転職先を選びましょう。

 

メリット

会計士が内部監査部門に転職するメリットは、大きく2つあります。

 会計士が内部監査に転職するメリット

  • ワークライフバランスが整いやすい
  • 各拠点・部署における業務フローを知れる

 

ワークライフバランスが整いやすい

先述のとおり、内部監査は事前に綿密なスケジュールを立て、業務を遂行します。

そのため、(不備等が見つからない限り)計画をコントロールしやすく、事前にスケジュールを想定しやすいという特徴があります。

元々の残業時間の少なさもあり、公私ともに安定するケースが多いでしょう。

ただし、実際の残業時間は企業によって異なりますので、事前に転職エージェント等に確認してください。

 

各拠点・部署における業務フローを知れる

内部監査では、監査法人でのJ-SOX監査よりも深く、業務フローを知ることになります。

なぜなら、各拠点・各部署の担当者から直接ヒアリングを行い、業務フローを確認するからです。

同業種・同業態のあるべきワークフローを知ることができるため、同業他社への転職時に有利に働きます。

もちろん、各部署でのフローを幅広く知ることから、経営層と同目線でのコミュニケーションが可能となるメリットもあります。

 

デメリット

一方、デメリットも2つ挙げられます。

 会計士が内部監査に転職するデメリット

  • コミュニケーション不足によるトラブルの可能性
  • やりがいを感じづらい

 

コミュニケーション不足によるトラブルの可能性

内部監査は、他部門とのコミュニケーションが多く必要となります。

「監査」という性質上、疎まれやすいポジションでもあることから、コミュニケーションが苦手な方には不向きかもしれません。

ただし、基本的には毎期同様の計画に基づき業務を遂行しますので、慣れればトラブルの発生は減るようです。

 

やりがいを感じづらい

内部監査は、それ自体が利益を生み出すサービスではないため、感謝されるシチュエーションが少ないです。

インタビュイーのnonoさんの会社では、独立的評価実施後に被評価部門から評価品質向上を目的としたアンケートをとり、この時に「内部統制の見直しに役立った」とのコメントがあると貢献度を感じられたそうです。

ただし、そもそも内部監査制度は過去に完成したものを踏襲するため、このような評価を受けることは難しいようです。

そのため、仕事に大きなやりがいを求める方には、内部監査はあまりオススメできないかもしれません。

 

会計士が内部監査に転職した後のキャリア

会計士が内部監査に転職した後のキャリア

私たち会計士が内部監査に転職すると、その後どのようなキャリアを積めるのでしょうか。

ここでは、「社内」および「社外」でのキャリアアップについてご紹介します。

 

① 社内でのキャリアアップ

社内では、経営幹部へのキャリアアップが見込まれます。

なぜなら、内部監査部門では企業全体の内部統制を対象とするため、全社的視点でビジネスを見る素養が身に着くためです。

このことから、内部監査部門での経験は経営幹部・管理職としてのキャリアアップに直接に役立ちます。

また、マネジメント層とコミュニケーションを取る際にに同じ視点で話ができるため、経営層との窓口としての活躍も期待されます。

 

② 社外でのキャリアアップ

内部監査でのキャリアは、次のような転職先で役に立ちます。

 内部監査からのキャリア(社外)

  • 同業他社の内部監査部門
  • IPO直後のベンチャー
  • FASコンサル

 

同業他社の内部監査部門

J-SOXの知識・経験は、ポータブルスキルとして他社でも同様に必要とされるため、特に同業種であれば、転職では有利に働きます。

 

IPO直後のベンチャー

内部統制監査報告書の提出は、上場後3年間免除されます。(一定以上の規模の会社を除く)

この期間に、外部監査に耐えうるJ-SOXを構築ニーズがあることから、IPO直後のベンチャー企業への道が開かれます。

現場では、

  • WTとは何なのか?
  • RCMはどのように作るのか?
  • サンプリングの考え方が分からない

等、とても基礎的なフェーズから始まることもあり、これをあるべき形へ構築することになります。

既に形成されたワークフローに、いかに効率的に監査の視点を組み込むかという「総合力」が求められるため、ベンチャー経理以上のタフさが求められるでしょう。

 

FASコンサル

「内部統制の構築支援」として、FASコンサルからの需要もあります。

  • 全社における重要な事業拠点となるため、内部統制構築が必要になった
  • IPO関連で、一時的に構築作業が必要になった

など、突発的(一時的)な要因によるクライアントニーズがあります。

このようなスポット発生のニーズに対応するため、内部統制専門のコンサルというポジションもあります。

また「会計対応」という観点からのニーズもあり、BIG4のフォレンジック部門への転職も選択肢の1つになります。

 

内部監査はこんな方におすすめ

内部監査は、こんな方にオススメです。

  • ワークライフバランスを整えたい方
  • 細やかな配慮が得意な方
  • コミュニケーションの得意な方

nonoさんへのインタビューを通じて、内部監査は「かなり配慮が必要な仕事である」と感じました。

監査法人での外部監査は、あくまで外部の人間として関わるため、(多少ミスがあったとしても)大目に見てもらえるケースもあるでしょう。

しかし、内部監査は「組織内の人間として」関わるため、コミュニケーションを誤ると言い争いに発展します。

一方で、コミュニケーションが得意・好きな方であれば、(周りの内部監査人と比較して)アドバンテージが取れるでしょう。

その他の転職先は、公認会計士の転職先を全て見せます【監査法人から、その先へ】でまとめて紹介しています。

 

内部監査に強い転職エージェント

会計士が「内部監査」を中心に転職活動する場合は、次の転職エージェントがおすすめです。

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「内部監査部門」を有するような大手(上場)企業は、大手エージェントを利用します。

中でもマイナビ会計士は最大手エージェントのため、求人数が多くオススメです。

エージェント選びで失敗をすると、転職までに多くの時間がかかってしまいます。

ぜひ正しいエージェントを選び、効率的に転職活動を進めてくださいね。