内部監査に転職した会計士の「年収」「仕事内容」「キャリア」を解説

内部監査に転職した会計士の「年収」「仕事内容」「キャリア」を解説

公認会計士・税理士の藤沼です。

ワークライフバランスを取りやすく、監査経験も活かしやすい転職先として、「内部監査」という選択肢があります。

そこで今回は、実際に内部監査に転職した会計士のインタビューをもとに、内部監査での働き方・キャリアを解説します。

転職先選びの参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

1986年生まれ(38歳)
公認会計士税理士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表

情報インタビュイー
公認会計士nonoさん
nonoさん

37歳
公認会計士

2008年  2月 EY新日本監査法人 入社
2014年10月 外資系上場企業(内部監査) 入社


目次

会計士が内部監査に転職したときの年収

内部監査に転職した会計士の平均年収を算出するため、大手会計系エージェントの公開求人データを全て抽出し、年収帯を集計しました。

結果は次のとおりです。(比較のため、BIG4アシュアランスの年収も併記)

会計士の内部監査への転職時の年収(平均)

全国東京
内部監査の転職時年収700万691万
大手監査法人の転職時年収648万676万

BIG4に比べれば年収平均は上がりますが、会計士の転職先の中ではやや低めの水準です。(経理とほぼ同水準)

このほか、会計士の転職先別年収については、次の記事内で詳細に検証しています。

内部監査(J-SOX)の仕事内容

内部監査(J-SOX)の仕事内容

会計士が内部監査に転職した際の仕事内容を、簡単に解説します。

ご存じの内容も多いと思いますが、実際の働き方のイメージを膨らませると良いでしょう。

なお、ここでは3月決算の会社を想定します。

① 独立的評価の対象子会社・対象プロセスの選定

まず第2四半期終了前(7~8月頃)、年度における自己評価範囲を決定し、内部監査部門内で共有します。

自己評価範囲の決定は通常、企業内のリスクマネジメントを担う部門が統括し、経理部門など決算財務報告に関わる部門と調整して行います。

自己評価範囲の決定・共有後、その中から独立的評価の対象とする範囲を、内部監査部門において検討・決定します(10月頃)。

自己評価を第2四半期と年度の2度に分ける場合は、独立的評価もそれに合わせて2回に分けて行うため、期中の情報(7月頃)をもって独立的評価の範囲を決定し、年度決算後に改めて検討することになります。

たとえば、独立的評価対象とする連結子会社については、当該会計年度の売上高等の財務数値を考慮して年度決算後(4月頃)に最終決定します。

② 独立的評価の実施

次に、独立的評価について簡単に解説します。

時期

内部監査部門による独立的評価は、自己評価完了後~有価証券報告書提出前までに行います。

年2回に分けて評価を行う場合、第2四半期決算後に自己評価が完了した後の11月頃を目安として行い、その後、年度決算後に自己評価が完了した後の5月~6月初旬頃に行います。

方法

評価の方法に決まりはないですが、通常は手続書(RMCや質問する具体的内容・必要な証跡等をまとめた資料)を作成します。

その後、手続書に沿ってプロセス実施担当者へのインタビュー・資料閲覧等を行い、各プロセスが適切に履行されていることを確認します。

なお、通常インタビューは対面で行われますが、コロナ禍においてはリモートワークとなった企業が増えました。

③ 不備を発見した場合の対応

独立的評価によってプロセスの不備を発見した場合、内部監査部門から被評価部門に対して、不備の内容・改善案を提示します。

この時に重要なのは、被評価部門との無用な言い争いや、改善案が非現実的で実施されない事態等を避けることです。

会計監査と同様の配慮ですが、「内部監査」では外部監査以上に言い争いに発展するケースが多く、十分な配慮が必要です。

なお、被評価部門における不備対応に時間を要するケースを想定し、年度決算を待たず、(可能なプロセスは)第2四半期決算後に評価を実施するケースが多いです。

会計士が内部監査に転職するメリット

会計士が内部監査に転職するメリット

会計士が内部監査に転職するメリットは、次のとおりです。

会計士が内部監査に転職するメリット
  1. ワークライフバランスが取りやすい
  2. 監査経験を活かしやすい
  3. 同業他社からの評価を高めることができる

それぞれ解説します。

① ワークライフバランスが整いやすい

内部監査での業務は、年間を通じて「計画に基づき実施する業務」であることから、ある程度スケジュールをコントロールできるという特徴があります。

そのため、不備が検出されない限り(そしてマンパワーに問題がない限り)、残業時間は少なく抑えられる傾向にあります。

スケジュール感としては、評価実施時期が繁忙期となるため、第2四半期後(3月決算なら11月頃)、及び決算後(3月決算なら5~6月頃)が忙しくなります。

とはいえ、BIG4ほど残業時間が多くなることは少なく、繁閑の時期が予め想定出来ているため、公私ともに安定するケースが多いです。

もちろん、人員数や職員の内部監査への理解度、組織再編の多さにもよって忙しさは変わりますので、求人応募前に、必ず転職エージェントに詳細を確認をしてください。

※  ご参考までに、たとえばインタビュイーのnonoさんの会社では、平時5~10時間/月繁忙期30時間/月の残業時間とのことでした。

② 監査経験を活かしやすい

ご存じのとおり、内部監査は監査経験をフルに活用することのできる転職先です。

評価拠点の選定やRCMの作成など、作成者側に回るものの、必要となるスキルに変わりはありません。

また、転職市場においても評価されやすいため、内定の獲得が比較的容易という特徴もあります。

転職先においても監査経験を活かしたいという方には、選択肢の1つになるでしょう。

③ 同業他社からの評価を高めることができる

内部監査では、組織内会計士として自社の業務フロー全般を理解することができます。

同業種・同業界の慣行となる業務フローに精通することで、同業他社からのニーズも高まり、同業界の転職市場での価値を高めることができるでしょう。

内部監査では業界知識も必要となることから、生え抜きの職員を配置する企業も多いですが、欠員が出た場合に補充が困難となるケースが散見されます。

この点で、市場規模の大きな業種・業界で内部監査を経験することは、自らの転職市場での価値向上につながるでしょう。

【無料】マイナビ会計士に登録する

\ かんたん3分で登録完了 /

/ 会計士向け、事業会社の求人数No.1

会計士が内部監査に転職するデメリット

会計士が内部監査に転職するデメリット

一方で、会計士が内部監査に転職することにはデメリットもあります。

会計士が内部監査に転職するデメリット
  1. コミュニケーション不足によるトラブルの可能性
  2. やりがいを感じづらい
  3. キャリアの幅が狭まりやすい

それぞれ解説します。

① コミュニケーション不足によるトラブルの可能性

内部監査では、他部門とのコミュニケーションが多く求められます。

監査という職務の性質上、疎まれやすいポジションでもあり、ミスによって軋轢を生んでしまうケースもあるようです。

そのため、コミュニケーションを苦手とする方には不向きかもしれません。

ただし、基本的には毎期同様の作業になりやすいため、慣れればトラブルの発生は減るでしょう。

② やりがいを感じづらい

内部監査は、それ自体が利益を生み出すサービスではないため、感謝されるシチュエーションは限定的です。

また、慣れてくると作業が毎期ルーティンワークになりやすく、やりがいを感じなくなるというデメリットがあります。

そのため、仕事にやりがいを求める方には、内部監査は向いていない可能性があります。

なお、情報インタビュイーのnonoさんの会社では、独立的評価実施後に被評価部門から評価品質向上を目的としたアンケートをとり、この時に「内部統制の見直しに役立った」とのコメントがあるとやりがいを感じたそうです。

③ キャリアの幅が狭まりやすい

内部監査に転職すると、その後のキャリアの幅が狭まるというデメリットがあります。

具体的に、内部監査を卒業したあとの転職先は次のとおりです。

内部監査からの転職先

※ 職種名をクリックすると、関連記事が開きます。

選択肢を4種挙げていますが、各職種における「内部統制・内部監査」の求人数は非常に少なく、内部監査卒業後のキャリアは極めて限定的です。

このため、一般に内部監査は40代以降、定年を見据えた方が選択する転職先であると言われます。

なお、会計士の転職先について、詳しくは 公認会計士の転職先を全て見せます。【監査法人から、その先へ】 で紹介しています。

\ かんたん3分で登録完了 /

/ 会計士向け、事業会社の求人数No.1

会計士が内部監査に転職する際のよくある疑問

会計士が内部監査に転職する際のよくある疑問

その他、内部への転職を考える際によくある疑問をまとめてみました。


内部監査に関連した資格はありますか?

代表的なものとして、公認内部監査人(CIA、IIA認定国際資格)、公認情報システム監査人(CISA、ISACA国際認定資格)、不正検査士(日本公認不正検査士協会認定資格)があります。

内部監査について全般的な復習をするのであれば、公認内部監査人を取得するのが最も手っ取り早いです。

また  IT監査に特化した「公認情報システム監査人」、不正監査に特化した「不正検査士」も、専門性を高めるための選択肢として考えられます。

30代会計士ですが、内部監査への転職は早いですか?

内部監査はワークライフバランスが取れますが、一方、その後のキャリアが狭まるというデメリットがあります。

今回の転職先で定年まで勤め上げるのなら良いかもしれませんが、また転職をしたくなるかもしれません。

会計士には「多くのキャリアを選べる」という大きなメリットがありますから、できれば、40代以降で内部監査を検討されたほうが良いと思います。

内部統制への転職におすすめの転職エージェント

内部統制への転職におすすめの転職エージェント

最後に、内部監査への転職におすすめの転職エージェントを紹介します。

  • マイナビ会計士(おすすめ)
  • レックスアドバイザーズ
  • ジャスネットキャリア

会計士ならマイナビ会計士1択です。

なぜなら、唯一の会計士専門エージェントであり、会計士向けの内部監査求人数がNo.1だからです。

内部監査の求人数は、かなり少なく、人気の求人からすぐに埋まってしまいます。

まずは転職エージェントに登録しておき、求人が出た瞬間にピックアップできる仕組みを作っておくことをオススメします。

【無料】マイナビ会計士に登録する

\ かんたん3分で登録完了 /

/ 会計士向け、事業会社の求人数No.1

目次