公認会計士・税理士の藤沼です。

FASの中でも少し特殊な「フォレンジック」という領域。

会計監査に似ているようで、実はだいぶ異なります。

そこで今回は、フォレンジックの仕事内容についてご紹介します。

なお、私たち会計士の転職先としてのフォレンジックは、BIG4に限定されます。

そのため本記事では、BIG4でのフォレンジック部門に関する情報を提供します。

 

フォレンジックの仕事内容

会計士としてのフォレンジックでの仕事内容は、かんたんに言えば「不正調査」や「不正会計調査」です。

しかし  その業務内容は多岐に渡り、それぞれ高い専門性が求められます。

 フォレンジックでの業務内容例

  • 危機対策支援
  • 海外法人に対する不正調査
  • 製品データ偽装の調査
  • サイバー攻撃に関する調査
  • 情報漏えいに関する調査
  • インサイダー取引の調査
  • 時間外労働・残業代の調査
  • デジタルフォレンジック など

 

この他にも、「不正予防支援」といったサービスラインでは、不正リスク管理体制の構築支援・グローバル・コンプライアンス体制の構築支援・M&Aプロセスにおける不正リスク管理体制の構築支援・グローバル行動規範の策定支援・外国公務員等への贈賄防止体制の構築支援、競争法・独占禁止法の遵守体制構築支援、サイバー攻撃への防御体制構築支援、デジタルフォレンジック、個人・企業の背景調査(バックグラウンド調査)がある。

 

不正の早期発見支援のサービスラインでは、M&Aにおける不正リスク発見支援、データ分析による不正リスク発見支援、従業員アンケートによる不正リスク発見支援、電子メール監査による不正リスク発見支援、サイバー攻撃の発見支援、デジタルフォレンジック業務がある。

訴訟・仲介支援では、訴訟関連サービス(係争支援における証拠収集・損害賠償に係る各種算定)、e-Discovery(e-ディスカバリー、電子情報開示)、社内ディスカバリー支援サービス、デジタルフォレンジックがある。

やや専門的な内容になるが、金融機関向けやコンプライアンス遵守などの支援では、マネーロンダリング(資金洗浄)防止関連サービス、損害保険向け査定・調査支援サービス、知的財産・契約遵守サービス(ロイヤリティ監査・ソフトウェアライセンス監査)、ソフトウェア資産管理サービスがある。

 

BIG4のフォレンジックの構成人員数は、何名程度でしたか(うち、会計士は何名程度でしたか)

Big4のフォレンジックチームでは昔は数十人程度であったが、最近ではサービスの多様化やクライアントからのニーズの高まりにより、構成人員は正確な人数は不明なものの各ファームで百人~数百人ほどいると思われる。会計士の人数もそれなりに多く正確人数の把握は難しいものの数十人程度は要ると思われる。

 

・フォレンジックにおけるクライアントのニーズは何か(代表的なものをいくつかお願いします)

昨今では企業を取り巻く事業環境はグローバル化、技術革新などにより年々複雑化しており、社内に根強く残る旧態依然としたカルチャーの打破と変化する外部環境への対応に追われている。現場レベルで、あるいはマネジメントも関与した形でコンプライアンスが軽視され不正会計や不祥事が引き起こされるケースがあり、このようなケースでは不正会計の調査のニーズがある。

他にも変化への対応が遅れ業績不振が続くケース、また事故や天災などにより業績が急落するケースなど危機的状況に陥る事案があるので、危機対応チームや損害賠償に関するデータ分析などのフォレンジックサービスが非常にニーズが高いものとして挙げられる。

 

BIG4のフォレンジックでは、どのようなチームが有るか

Big4のフォレンジックであれば、大きく分けて不正調査、贈収賄・汚職および競争法関連サービス、デジタルフォレンジックス、eディスカバリー、不正兆候検知データ分析、ライセンスマネジメント、契約の遵守に関するモニタリング、係争・訴訟支援サービス、マネーロンダリング防止関連サービス、サイバーセキュリティ&プライバシー、危機対応、フォレンジック画像分析等がある。ファームによってチームの編成方針が異なるもののグローバルで提供するサービスラインはそこまで多く異ならないので、これらのサービスラインを頭に入れておけば問題ないであろう。会計士が活躍できるのは不正調査や、係争・訴訟支援サービス(バリュエーションに関するもの)であると思われる。

 

BIG4のフォレンジックの各チームでは、どのような住み分けがなされているか

各チームにおいて使用する専門性は異なるので、会計系の知識を使用する不正調査と係争支援業務は会計士や財務に関するバックグラウンドを持つメンバーが多く、サイバーセキュリティやデジタルフォレンジックサービスに関するチームはITに強いメンバーが多いというようにすみわけがなされていることが多いと思われる。

 

BIG4のフォレンジックでは、他の部門(M&Aチームなど)と連携されるか

フォレンジックのチームは基本的にスポットで依頼のあった不正調査の案件を粛々と進めていくことが多いのでM&Aアドバイザリー業務との連携は殆どないと考えられる。しかし、M&Aの対象会社を買収後に不正会計があったり、横領などの不正があった場合にはM&Aアドバイザリー業務とは別にBig4の不正調査チームを紹介し、実際に業務を進めていくことがある。

特にBig4では不正調査などを入り口にして、色々な企業へのアドバイザリー業務を売り込むことができる(例:不正調査のプロジェクトXが終了後に、クライアントとBig4のファームが仲良くなり、その後のM&Aアドバイザリー業務の受注にもつながりやすくなるという仕組み)

そのため、連携は少ないものの営業活動という点では不正調査の業務はBig4のような会計系のファームにとっては実入りの良いサービスになる。

 

BIG4のフォレンジックの各チームでは、どのような業務を行っているか

フォレンジックサービスは多岐にわたるので、ここでは会計士が関与する可能性が高い不正調査や係争・訴訟支援サービスに絞って説明していきたい。

不正調査業務では、不正会計・粉飾決算に関する調査・品質不正・データ改ざんに関する調査、資産横領・背任に関する調査、贈収賄・汚職に関する調査、不正リスクマネジメントが主たる業務になる。基本的には第3者委員会の発足とともに、調査を通じた事実関係の実態解明はもとより、影響額や根本原因の分析、さらには調査手法や再発防止策の策定に至るまで、利害関係者への詳細な情報開示と説明をする分析・レポート作成業務が主たる内容になる。

係争支援では、M&Aに関するものとして、株式価値評価を巡る係争がある。当該サービスに関してはバリュエーション業務と親和性が高いが、具体的には裁判所や当事者からの依頼によりスクイーズドアウトを伴う組織再編における株式買取請求事件や、非公開企業の株式移転などにける株式の公正価値評価を行うことになる。これらの価値評価業務では外部の専門家・第三者の目線で公正な価値評価を行う必要があるので会計や財務に専門的な知見がありバリュエーション業務の経験のある会計士には強みの発揮できる分野になる。これらのアドバイザリー業務では争点となる経済的論点について批判に耐えうる評価ロジックを構築し専門的な概念をわかりやすく説明することが求められる。

 

・監査法人(アシュアランス)での経験は、どのような場面で、どのように活かすことができるか(具体的にお願いします)

監査法人での経験は、フォレンジック業務では非常に活かしやすいものだと思う。監査法人が行う財務諸表監査は不正の発見を目的にしているわけではないものの、誤謬や不適切な会計処理を指摘することは業務の一環で存在するので、不正会計の調査や不正融資の調査などの財務諸表の意図的な不正操作に関する業務であれば監査業務の延長線上にあるものとして違和感なく遂行できるものだと思う。

例えば、不正融資の案件であれば、不正融資案件の融資先の財務諸表を分析することにより、本当に融資が妥当であったが無理のある融資をしていなかったか、社内の融資マニュアルに反した無理のある営業活動をしていなかったか等の分析や調査結果が得られるので、財務分析や違和感のチェックなどの監査業務で得られる経験はすぐに活かせる。

 

BIG4フォレンジックでの残業時間は月どの程度か(おおよそで結構です)

Big4のフォレンジック部門は業務の状況によるものの、残業時間はM&Aアドバイザリー業務よりは少ない傾向にあると思う(月に数十時間程度)。ただしレポート作成の佳境に差し掛かっている場合はそれなりに高い業務負荷がかかることは認識しておく必要がある。

 

BIG4フォレンジックでは、英語はどの程度使いますか

国内の不正調査案件では英語は全く使用しないが、海外などクロスボーダー案件であれば英語は頻繁に使用すると思われる。話すというよりは英語の文書が沢山出てくるのでそれらの資料を読み込んで資料を作成できるかどうかが大事になる。

 

BIG4のフォレンジックで求められる能力・スキルを教えて下さい

フォレンジックで求められるスキルは基本的な会計の知識や理解、およびビジネスマンとして基礎的なリサーチ能力、分析能力が求められる。アウトプットはレポートになることが多いので文書作成能力は当然に必要になる。フォレンジックでは関係者に対するヒアリングをよく行うのでクライアントとのコミュニケーション能力も重要なスキルの一つである。

 

・フォレンジックに転職する際、取っておいた方が良い資格はあるか

Big4のフォレンジックチームであれば、会計不正などの数字に関する業務に関与する場合は公認会計士の資格もしくは試験合格が一番有効であるが、それ以外であれば公認不正検査士が非常に良い資格であろう。他にも海外案件であればTOEICなどの英語力などが分かりやすい資格が最も適切であろう。

デジタル関係の不正調査であれば、ITエンジニアなど素養がある方が望ましい

 

BIG4フォレンジックで働く人のバックボーンを教えて下さい

Big4のフォレンジックで働く人のバックボーンとしては、会計士のほか、政府機関や民間企業でサイバーセキュリティなどの業務に従事していた人など多様な人がいる。M&Aのアドバイザリー業務や財務デューデリジェンスの業務を提供する部署は数字に強い人や公認会計士・投資銀行などで業務経験がある人しか採用しない傾向にあるが、フォレンジック業務は一部の不正会計の調査以外はポテンシャルでも興味があればチャレンジできるし人手不足で社会的なニーズも高いので未経験でも社会人としての基礎がしっかりしていれば採用可能性はある。

 

BIG4フォレンジックに転職する会計士のバックボーンを教えて下さい

基本的には会計士として最初からフォレンジックに行くよりは、監査業務や財務DD等の業務を経験しているようなそれなりに経験のある会計士が転職する傾向にある。またBig4のFAS内で社内異動をして不正調査のチームに移る人も一定数いる。

バリュエーション業務などM&A関連のサービスを提供していた人でも社内異動で移ることもあるので、本人の適性や希望に応じて、フォレンジックに移る人が多いと思われる。

 

BIG4フォレンジックでは、どのような点で「やりがい」「楽しさ」を感じるか

フォレンジックでは新聞の紙面を飾るような不正調査や不正会計の調査に関して第3者委員会と一緒になって会計不正の調査を進めていくことで、謎解きに似た感覚で仕事を進めていけるという点で面白さを感じると思う。楽しさという点ではタフなシチュエーションもあるので一概には言えないが、成果物の第3者委員会のレポートができると達成感はそれなりにあると思う。

 

・フォレンジックを卒業した後のキャリアは、どのようなものがあるか

フォレンジック後のキャリアでは、大企業のコンプライアンスに関する部門などへの転職が考えられるが、フォレンジックサービス自体がBig4のプラットフォームで提供可能な専門性の高いサービスなので、あまり転職を積極的にする人はいないという印象である。

 

フォレンジックに強い転職エージェント

会計士が「フォレンジック」を中心に転職活動する場合は、次の転職エージェントがおすすめです。

  1. マイナビ会計士
  2. ジャスネットキャリア
  3. REXアドバイザー

フォレンジックサービスを提供する企業は、非常に限定的です。

幅広い求人を有する 大手転職エージェント を選ぶことで、「求人が全くなかった」という失敗を避けられます。

他のエージェントについて、詳細は次の記事でご紹介しています。

エージェント選びで失敗をすると、転職までに多くの時間がかかってしまいます。(私のように)

ぜひ、効率的な転職活動を心がけてください。