公認会計士・税理士の藤沼です。
大手監査法人から1度転職し、その後独立しました。
今回は、会計士の転職理由についてご紹介します。
私の実体験も含めて、網羅的にご紹介したいと思います。
なお、本記事の想定読者は、やや転職を視野に入れ始めた会計士の方です。
目次
公認会計士のよくある転職理由は?【実体験と他者事例】
一般的に 監査法人は高給かつ社会的地位も高い組織です。
それでも、辞めたいという人は非常に多いですよね。
理由は次のとおりです。
ネガティブな転職理由
- 激務すぎて辛い(体力的問題)
- プレッシャーが強くてキツい(精神的問題)
- 周囲の人間関係に疲れた(人間関係)
- 昇格できる可能性が薄い
- 監査自体がつまらない
ポジティブな転職理由
- 監査以外の経験を積みたい(スキルアップ)
- クライアントの役に立ちたい(やりがい)
- 監査ではなく、作る側に回りたい
- もっと収入を上げたい(年収アップ)
- 独立の足掛かりとして
- 英語力をもっと活かしたい
ちなみに、「ポジティブな転職理由」は転職における面接時の「転職理由」としてそのまま使える理由になります。
ネガティブな転職理由は、面接で使ってはダメな理由です。
本記事では、これらの理由で本当に転職して良いのか、1つの指針をご提供します。
ネガティブな転職理由
ネガティブな転職理由
- 激務すぎて辛い(体力的問題)
- プレッシャーが強くてキツい(精神的問題)
- 周囲の人間関係に疲れた(人間関係)
- 昇格できる可能性が薄い
- 監査自体がつまらない
会計士が転職する際の、本音となる部分です。
ぶっちゃけた話、私もネガティブな理由はありました。
① 激務すぎて辛い
体力的な問題ですが、この理由は細かく2つに分けられます。
- 仕事量が多いことが原因
- 年齢的が原因
仕事量が多い場合、これを軽減できれば転職の必要がなくなりますよね。
軽減方法としては、(既にやっていると思いますが)業務を効率化することがまず考えられます。
それでも多ければ、事業部の協力が必要となるでしょう。
すなわち、稼働率の低いチームへ移動させてもらうという方法です。
監査法人は会計士不足ですから、この程度のワガママは聞いてもらえます。(むしろ「転職」は人生に関わるので、この程度の要求は全然OKかと。)
次に、年齢についてですが、こちらは仕方のない部分が多いでしょう。
事実として、40代以上の会計士の場合、事業会社へ転職される方が非常に多いです。
40代になると、体を酷使し続けるよりも、ある程度セーブした働き方にシフトする方が多いですね。
なので、ネガティブな理由と言いつつ、実はごく当然といえる理由です。
なお、ワークライフバランスと年収維持の両立は無理です。
>>関連記事:会計士の転職|ワークライフバランスと年収維持の両立は無理
② プレッシャーが強い
会計士は、精神的プレッシャーを受ける機会が非常に多いです。
プレッシャーについても、大きく2つに分けられます。
- クライアントからのプレッシャー
- 上司からのプレッシャー
いずれの場合も、チームを変更してもらう事で対応できますよね。
特に大きなクライアント・チームの場合は、プレッシャーがより強い傾向にあります。
チームを変えてもらうという発想が無い方もいるようですが、とても勿体ないです。
大手監査法人だからこそ、組織内での異動というメリットがあるのです。
今のチームがキツい=転職 というのは早計です。
組織が大きければ、異動による気まずさもさほど無いはずですよ。
私も上司が合わないという理由(直接言ったわけではないですが、多分伝わってる)でチームを異動しました。
その後職場で何度かその上司とすれ違うことがありましたが、堂々と挨拶できますよ。笑
悪いことをしたわけではありませんからね。
一方で、「仕事自体のプレッシャー」に悩みを抱えている方の場合には、転職を考えても良いと思います。
私自信も、この仕事プレッシャー強すぎだろ。と感じてました。
③ 周囲の人間関係に疲れた
こちらも①~②と同様になりますが、チームを異動することで回避できます。
これを「逃げ」と捉えるか、「適材適所」と捉えるかはご自身次第です。
ただ、監査法人ってチームでランチに出かけたりと、ややチーム内コミュニケーションが多い傾向にあります。
普通の会社では、仲の良い人同士でランチに行ったり、一人で食べたりしますからね。
これは組織特融ですので、人間関係で疲れる方は多いです。
④ 昇格できる可能性が低い
具体的には、次の昇格時です。
- シニア → マネージャー
- マネージャー → パートナー
どちらも、業務内容・年収がグッとレベルアップする時期ですね。
これは仕方がない、と言って諦めて転職する方もおられますが、実は回避方法があります。
実は、こちらも上層部に掛け合うことで、昇格させてもらえる可能性があります。
ぶっちゃけた話、個人の評価なんていくらでも操作可能ですよね。
評価する人自身が人間ですので、個人的な感情は入ります。
特に大規模チームの場合は、毎年誰を昇格させるか上層部で決めて、複数の評価者全員で高評価を付ける、なんて事が行われています。
「どうしても昇格したい」という場合は、「上げてもらえないなら辞めます」と言ってしまえば良いわけです。
なので、転職を視野に入れているのであれば、試してみる価値はあるかと。
⑤ 監査自体がつまらない
こちらも、よくある転職理由になります。
特にシニア層の会計士は、この理由で転職しています。
正直、ごもっともな理由でして、どうしようもありません。
実際私も、この理由で転職していますしね。
なお、この理由をポジティブに変換すると、「やりがいのある仕事がしたい」という理由になります。
「監査がつまらないから辞めたい」と感じている方は、ぶっちゃけ監査法人内ではどうしようもないので、さっさと転職したほうが良いと思います。
ポジティブな転職理由
ポジティブな転職理由
- 監査以外の経験を積みたい(スキルアップ)
- クライアントの役に立ちたい(やりがい)
- 監査ではなく、作る側に回りたい
- もっと収入を上げたい(年収アップ)
- 独立の足掛かりとして
- 英語力をもっと活かしたい
ネガティブな転職理由だけで転職される方も大変多いですが、それだけでは面接は通りません。
なので、転職時に説明できる理由として、これらを使うと良いでしょう。
ただし先述のとおり、あまりにも嘘で固めすぎると後々後悔しますので、バランスよく使いましょう。
① 監査以外の経験を積みたい
監査法人以外の業種に転職する場合は、どこでも広く使える理由ですね。
監査法人では、監査以外の業務ができないことは明白ですので。
ただし、この理由だけでは弱いですね。
理由は、「じゃぁなぜウチなの?」と聞かれた時に答えられないからです。
この問いに対しては、次の2通りの回答方法があります。
- 幅広く色々な業務ができるから
- 特定の分野に特化しているから
事業会社や会計事務所なら前者、コンサル系なら後者を使えますね。
>>関連記事:公認会計士の転職先は、こんなにあります。
② クライアントの役に立ちたい
スタッフ~シニア層の転職理由としては、一番多いのがこちらです。
監査法人での業務は、クライアントから感謝される機会が非常に少なかったです。
監査を極めようとしようものなら、むしろクライアントからは嫌われますからね。笑
一方で、コンサルティング会社に転職する事で、こちらのメリットを享受することができます。
なお、面接時はこちらの理由だけでは弱いため、他のポジティブ理由と掛け合わせることと良いですよ。
>>関連記事:会計士がコンサルに転職する前に、少し考えた方が良いこと
③ 監査ではなく、作る側に回りたい
事業会社で得られるスキルは、次のとおりです。
- 税務の知識
- 予算編成能力
- 業務の効率化スキル
転職先としては保守的と思われやすい事業会社ですが、得られるスキルはかなり多いですよ。
職人気質の方は、事業会社に転職する傾向が強いです。
また、マネージメントに長けている方は、IPOやメガベンチャーに転職する傾向が強いです。
いずれも「作る側」になれますので、監査よりも面白味はあります。
また、企業から監査対応を任されることになりますので、会計士としての経験を組織で活用できます。
>>関連記事:会計士が事業会社(経理)に転職するメリットと注意点
④ もっと収入を上げたい(年収アップ)
こちらの転職理由の場合、コンサルまたはIPOの2択となります。
コンサルの場合には、英語力が必要となるケースもありますが、必要でないケースもあります。
また、IPOの場合にはストックオプションの獲得を目指すため、ややギャンブル的要素もありますね。(見る目が必要)
なお、2019年現在、年収アップはわりと簡単です。
私の場合は、コンサルに転職して年収700万→900万にアップしました。>>関連記事:公認会計士がFASコンサルに転職して1年目の年収【給与明細公開】
仕事量はさほど増えず年収だけアップします。
また、コンサルの仕事自体もやりがいがあるので、監査法人時代ほど疲れを感じませんでした。
⑤ 独立の足掛かりとして
これも、私の転職理由の1つです。
もちろん面接時には言えませんが。笑
どのような独立を考えているのかによって、転職先は変わりますよね。
- 会計事務所を開業する → 会計事務所・コンサルがおすすめ
- 事業会社を作る → コンサル・ベンチャーがおすすめ
私はちょっと特殊で、事務所と事業会社を両方作りたかったので、コンサルにしました。
公認会計士が事務所を開業する場合、税務だけでやっていくのはあまりオススメしません。
税理士さんには勝てませんので。(勉強すれば戦えますが、コスパは良くないです。)
そのため、会計事務所に転職する場合は、コンサルやAUPを手広くやっている事務所に転職するのがベターです。
また、コンサルの場合は特化型ではなく、こちらも手広く色々やっているコンサルに転職する方が良いです。
事務所を開業すると、本当に色々な仕事を受注する事になります。
特定の業務に特化した場合、(よっぽど将来的に稼げる自信がない限り)仕事が来ず廃業する可能性が高いです。
事業会社を作る場合は、コンサル手広く勉強するか、ベンチャーで泥臭さを学ぶのがオススメです。
⑥ 英語力をもっと活かしたい
監査法人内でも英語力は使う機会が多いですが、監査法人は完全なる外資系企業ではありませんからね。
公用語が英語であったり、コミュニケーションが全て英語となると、活躍の場は一気に広がります。
英語力を活かす方法としては、次の2つのパターンがあります。
- コンサルに転職し、案件上で英語力を発揮する
- 外資系事業会社に転職し、英語圏での仕事をする
「英語力を評価してほしい」という気持ちの強い方は、前者がオススメです。
組織内の一部に「英語ができる人がいる」という状況であれば、英語力は高く評価されますからね。
一方で、「純粋に英語圏で仕事がしたい」方や、「将来的に海外で仕事がしたい」という方は後者がオススメです。
英語力が評価される機会は少ないですが、英会話能力は非常に鍛えられますので。
ちなみに、英語のできる会計士は少ないので、高額な年収を提示されることが多いです。
面接時の「転職理由」について
もし面接時の「転職理由」をお考え中であれば、ちょっとしたアドバイスがあります。
それは、
です。
事実として、もし貴方が20~30代なら、ほとんどの会社から内定を貰えるでしょう。(2019年現在)
2019年現在、会計士の転職市場は超売り手ですので。
だからこそ、できる限り転職理由は嘘をつかず、本当のところを伝えるべきです。
その理由は、
からです。
面接で聞かれる「転職理由」は、企業にとって「転職者がまともな人間か」を判断する基準にもなります。
しかし、転職者の方向性を理解する基礎にもなります。
あまりにも優等生な回答をしてしまうと、内定は取れたとしても、その後自分のやりたい事の方向性を理解してもらえない可能性が出てきます。
かといって、全てを本音で喋ってしまうのも控えましょう。
感覚的ですが、本音7:建前3 くらいで良いかと。
更に有利に転職を進めるために
実は、会計士は転職後にすぐ離職する確率がとても高いです。
なぜなら、転職(就職)活動に慣れていないからです。
よって、自己分析・業界分析・企業分析の方法が分からず、転職を簡単に済ませてしまう傾向にあります。
しかし、今更すべてを自分一人で進めるのは無理ゲーです。
そこでオススメなのが、転職エージェントを利用する事です。
エージェントは登録から成約まで、オール無料ですので、絶対利用した方が良いです。
会計士が転職するにあたって、優秀なエージェントは次の3社です。
マイナビ会計士 :全般的に強い
- MS-Japan
:事業会社に強い
- ジャスネットキャリア
:コンサル・事務所に強い
「強い」というのは、求人企業に関する情報の深度を意味します。
たとえばMS-JAPANは事業会社に特化しているので、特定の事業会社に関するより深い情報(たとえば企業風土など)を持っています。
興味のある分野によって、エージェントを使い分けると効率的です。
>>関連記事:会計士におすすめの転職エージェントと効果的な利用法
なお、マイナビ会計士は全般的に強いですが、それよりも「案件を網羅する」という意味で、登録だけしておくと良いですよ。
良い案件を漏らすのは、機会損失になるので勿体ないです。