公認会計士・税理士の藤沼です。
大手監査法人を退職後、国内の中堅FASファームに転職しました。
そこで今回は、FASへの転職を考えている会計士の方向けに、私がFASで働いて感じたことをお話します。
転職における失敗談なども掲載しましたので、ご参考いただければ幸いです。
目次
そもそも、FASとは?

初めて転職活動をされる方は、「そもそもFASって何?」という方も多いと思います。 私もそうでした。
特に「FAS」は2つの意味で用いられるため、注意が必要です。
これを知っておかなければ、情報収集の際に混乱します。
FASは2つの意味で用いられる
- サービス としてのFAS
- 職種 としてのFAS
① サービスとしてのFAS
FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)は文字通り、ファイナンス面でアドバイスをするサービスの事です。
ファイナンスを直訳すると「金融」ですが、FASの領域では一般に次のサービスを提供します。
サービスとしてのFASの種類
- 財務DD
- バリュエーション
- PMI
- BIG4特有の会計アドバイザリー(PPA・減損テスト等)
- フォレンジック(不正調査)
- 企業再生・事業再生
- その他(IFRS、IT、内部統制、パブリック、新興国など)
いきなり難しい言葉が並びますが、具体的な内容は後ほど 詳しく解説します。
上記のうち、最も市場が大きく サービスも多いのが「財務DD」及び「バリュエーション」です。
実は「FAS」には明確な定義がありません。
しかし、一般に「FAS」と言うと(財務DDとバリュエーションを含めた)M&Aアドバイザリーを暗示することが多いです。
会計士業界では コンサル = FAS と言っても過言ではなく、コンサルに転身したい会計士のほとんどは、FASに転職します。
② 職種としてのFAS
特定の職種を「FAS」と呼ぶケースもあります。
使い方としては「FASに転職した」「FASで働いている」といった感じです。
こちらも明確な定義はありませんが、職種としてFASを指す場合、通常 次の職種を指します。
職種としてのFAS
- 国内系FASコンサル会社(本記事のメイン)
- BIG4のアドバイザリー部門
- 会計事務所のFASチーム
このうち 本記事では、国内系FAS(最も多いFAS)をメインで取り扱います。
BIG4のアドバイザリー部門については、「監査法人のアドバイザリーに転職した、会計士のキャリアを解説」でご紹介し、会計事務所については「会計士 転職 会計事務所【更新中】」でご紹介しています。
また、会計士の転職先は全12種ありますが、このほかにもFASに関係する転職先は非常に多いです。(一部の事業会社や、投資銀行、PEファンド等でもFASの知見が活かされます)
>>関連記事:公認会計士の転職先を全て見せます【監査法人から、その先へ】
会計士によるFASでの仕事内容

ここでは、サービスとしてのFASについて解説します。
① 財務DD
財務DD(財務デューデリジェンス)は、M&Aに関するFAS業務の1つです。
監査法人出身者なら、一度は耳にした事があると思いますが、念のため少し触れておきます。
M&Aでは、被買収企業の価値を知るため、自社やコンサルに委託して対象会社の調査を行います。
とは言え 監査とは目的が違うことから、財務DD特有の論点などがあり、FASに参入した会計士はまず財務DDから担当するケースが多いです。(私もそうでした)
財務DDの経験はとても汎用性が高く、FASのベースを築くと言っても過言では無いでしょう。
>>関連記事:財務DDとはどんな業務?
② バリュエーション
バリュエーション(企業価値評価)は、M&Aに関するFAS業務の1つです。
実際に企業買収を行う前に、買収側企業は 被買収企業の価値を見定め、1株あたりの価格を決定します。
買収側企業(バイサイドと言います)は 算定された価格よりも購入価格が安ければ、投資することを決めるでしょう。
また、売手側企業(セルサイドと言います)がバリュエーションを行うこともあり、これにより投資家たちに「売値」を示すことができますから、より買い手が見つかりやすくなるというメリットがあります。
なお、株価の算定方法には 類似会社比較法・DCF法・純資産法などがあります。
>>関連記事:バリュエーションとはどんな業務?
面白いくらいに「公認会計士試験」での勉強内容(経営学)がそのまま業務に活かせるため、会計士としてのアドバンテージが得られる分野です。
こちらも財務DDと同様、FASのベースとなります。
③ PMI
PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)も、財務DD・バリュエーションと同様、M&Aに関するFAS業務の1つです。
PMIは「M&A後の統合作業」を指します。
それぞれ異なる組織を1つの事業体(または連結範囲)に統合するため、どうしても会計処理・内部統制に齟齬が生じ、これをケアするのがPMIです。
財務DDやバリュエーションは、正直、そこまで企業を知らずとも ある程度仕事はできてしまいます。(やや、アカデミックな分野です)
しかし、PMIでは個々の業務を理解しなければならず、泥臭い作業も増えてきます。
>>関連記事:PMIとは?【更新中】
ちなみに、全くの未経験で いきなりPMIをやる、、、というのは少しハードルが高いです。
④ BIG4特有の会計アドバイザリー
BIG4(大手監査法人アドバイザリー部門)ならではのサービスとして、「PPA」や「減損テスト」のアドバイザリーサービスがあります。
こちらも、M&Aに関連するFAS業務です。
PPA(パーチェス・プライス・アロケーション)とは、買収時における取得原価の配分を言います。
M&Aでは、B/Sに計上されている資産・負債を引き継ぎますが、目に見えない無形の資産も引き継ぐ必要があり、この無形資産を識別するための一連の手続きをPPAと呼びます。
>>関連記事:PPAとは【更新中】
減損テストは説明不要だと思いますが、主にのれんの減損兆候~測定までのテストを指します。
そのため、クライアントからの需要がわりと多いのです。
また、なぜBIG4特有のサービスであるかと言うと、監査法人経由での依頼が多いからです。
監査チームのクライアントのPPAや大規模M&Aの減損テストを依頼されるケースが多いため、大手監査法人のアドバイザリー部門には専門チームが存在します。(なお、厳密にはその他のファームでも提供されていますが、数は圧倒的にBIG4が大半を占めます)
⑤ フォレンジック
フォレンジックとは、不正調査を言います。
【更新中】
>>関連記事:フォレンジックで働く会計士のキャリア【更新中】
⑥ 企業再生・事業再生
文字どおり、業績の悪化した企業・事業を再生させるコンサルサービスです。
【更新中】
FASでの仕事のやりがい

私はEY新日本監査法人に4年半勤め、その後FASに転職しました。
FASでは、財務DD・バリュエーション・その他特殊なFASに従事しましたが、監査とは比べ物にならない程のやりがいを感じました。
FASはコンサルですから、基本的に残業時間は多めです。(私の場合は、月に50~60時間程度)
FASの契約は、基本的に「クライアントが自分でできないことを、外部に委託する」というスタンスで始まります。
そのため、クライアントからは色々と質問される機会が多く、これに答えられると非常に感謝されます。
またFASでは、会計監査のスキルを活かしながらも 多くの専門知識を吸収できるため、1年間で大きく成長を実感しました。
会計士がFASに転職したときの年収

ここでは、職種としてのFASの「年収」について解説します。
まず結論ですが、各FASにおける転職時の年収は、次のとおりです。
FASに転職した時の平均年収
- BIG4アドバイザリー部門: 909万円
- 国内系FAS会社: 771万円
- 会計事務所(所長が会計士): 755万円
転職時の年収は、大手企業ほど高い傾向にあります。
しかし、1つだけ注意が必要です。 ただし、こちらは あくまで「転職時」の年収なのです。
たとえばBIG4は 昇給率が非常に低く、その後の年収が(昇格しなければ)ほとんど伸びません。
たとえば私の同期(監査法人経験4年)は、会計事務所に転職して3年目で年収が1,000万に到達しました。
>>関連記事:会計士 転職 会計事務所【更新中】
会計士の転職先の中で、FAS系は年収が高いです。
新たな武器(スキル)を得ることで年収がグッと上がりますから、その1つとしてFASを選ぶ価値は大いにあるでしょう。
そのほか 会計士の転職先の年収は「会計士が転職すると、年収はいくらになる?【全業種調べてみた】」で全てまとめています。
会計士がFASに転職したときの残業時間

FASは、一般的に残業時間が多くなる傾向にあります。
「コンサルだから残業が多い」という訳ではなく、シンプルに、「市場での要求水準」が高まっていることが理由だと考えられます。
一方で M&A市場はまだまだ活発であり、プロジェクトはどんどん降ってきます。(むしろ コロナ禍の方が売却ニーズは増えている気がします)
そのため、どんなに少なくとも 月平均30時間 は残業が発生するでしょう。
FASはプロジェクト単位で仕事が動くため、契約後、すぐに仕事がスタートします。
そして、複数のプロジェクトが同時に走ってしまうと、一気に忙しくなるという弊害があります。
この点は、監査との大きな違いですので 注意して下さい。
面白くてやりがいはありますが、体力的な厳しさもあるのです。
FASからの転職先

転職する際は、その後のキャリアも見据える必要があります。
FASからの転職先としては、次のような職種が代表的です。
FASからの転職先
- 同業種
- 事業会社の経理(M&Aチーム)
- ベンチャーCFO
- 事業会社の経営企画
- 投資銀行
- PEファンド
同業他社を渡り歩く方もいるようですが、FASからのキャリアアップとして代表的なのは「事業会社のM&Aチーム」です。(ただし、再生やフォレンジックは別)
IT系や一部のメガベンチャー企業では、自社でM&Aチームを用意します。
なお、独立を考える会計士にとっても FASは重要なスキルです。
私自身も会計事務所の1つのサービスラインとしてFASを提供しており、FASのみで独立した会計士の知人もいます。
>>関連記事:会計士が独立するための転職先について、経験者が語ってみる。
このように、FASでの経験は大きくキャリアを広げます。
私が監査法人からの転職先としてFASを選んだ理由は、キャリアの幅広さです。
結果論かもしれませんが、私は1年で独立できました。
会計士がFASに転職する際の注意点

絶対に注意すべき点が3つあります。
FAS自体は本当に面白い仕事でしたが、「ちょっと失敗した」と感じた点もあったのです。
【更新中】
①
FAS志望の会計士におすすめの転職エージェント
私は転職活動時、20社もの転職エージェントに登録し、1年間転職活動をしていました。
最もおすすめのエージェントは、マイナビ会計士でした。
理由としては求人数が断トツであり、唯一の会計士専門エージェントだからです。
>>関連記事:公認会計士におすすめの転職エージェント【比較20社】
以上、FASへの転職日誌でした。
ここでの情報は、ほんの一部です。
詳細は、転職エージェントから正しい情報を入手して下さい。