公認会計士・税理士の藤沼です。
転職のために情報を集めていたら、転職までに1年もかかってしまいました。
今回は 公認会計士の転職先について、網羅的にご紹介します。
私が活動を始めた頃、「業界用語」「専門用語」があまりにも多く、サイトを見てもよく理解できませんでした。
こちらでイメージを掴んでいただければ幸いです。
本記事を読むメリット
- 会計士の転職先について、網羅的に知ることができる
- 専門用語が少なく、初めて転職する方も理解できる
目次
公認会計士の転職先一覧

公認会計士への需要は、非常に多いです。
そのため 転職先に悩む方も多いでしょう。
転職先は大きく12カテゴリに分けられ、約97%の会計士は、下記いずれかのカテゴリに転職しています。
公認会計士の転職先12選
キャリアの幅広さは、公認会計士の大きな魅力です。
では次に、それぞれ転職先の内容をご紹介します。
公認会計士の転職先の特徴

なぜか、会計士業界は「専門用語」が多く、読んでもよく分からない情報が多いです。
そこで本記事では、シンプルに分かりやすく特徴を紹介します。
転職先一覧(業態別)
1.事業会社
事業会社でのポジションは、大きく4種に区分されます。
会計士が転職できるポジション
- 経理
- ベンチャーCFO
- 経営企画
- 内部監査
特に「経理」は 監査法人での経験がフルに活かせるため、会計士の転職先として最も人気のポジションです。
① 経理

会計知識を活かすことができ、「税務」「資金繰り」「予算編成」等、多様な経験を得ることができるからです。
そのほか、経理には次のような特徴があります。
会計士が経理へ転職した際の特徴
- 残業時間をある程度想定できる
- 汎用性の高い経験が得られる
- 監査経験を活かせる
上場企業では「監査対応」も求められることから、会計士は非常に重宝されます。
業績の安定した企業であれば、残業時間は毎期同程度であることから、「求人票に記載された残業時間との齟齬が少ない」という利点もあります。
そのような組織では、M&A専門のチームを有しており、通常の経理とは業務内容が異なる点に注意してください。
② ベンチャーCFO

なぜなら 組織の平均年齢が若く、コストパフォーマンスの高い優秀な人材を求める為です。
ベンチャーCFOに転職するメリットは、次のとおりです。
ベンチャーCFOのメリット
- 経営に関与できる
- IPOの知見を活かせる
- 組織を動かす「面白さ」がある
- ストックオプションにより、多額の報酬を手にする可能性がある
IPOを目指す場合、業務は多忙となるでしょう。
しかし、経験・収入といったリターンもあり、大きなキャリアアップが見込まれます。
③ 経営企画

経営と会計は、表裏一体です。 経営成績を伸ばすためには、会計数値を読めなければなりません。
経営企画では、1企業のビジネスを動かします。
会計面だけでなく、事業面から組織を動かしてみたいという方には、おすすめのポジションです。
④ 内部監査

上場直後の上場会社では、内部監査部門のキーマンとして 公認会計士を採用するケースがあります。
J-SOXは経営者にとっても馴染みがないことから、IPO後のJ-SOX監査猶予期間が近づくにつれ、ニーズが非常に高まります。
組織のコーポレートガバナンスに細部まで関与するため、「不正防止」等の知識も身に付くでしょう。
2.コンサルティング会社
監査とは異なり、クライアントをサポートする職務であることから、感謝される機会も非常に多いのです。
コンサルにも種類がありますが、私たち会計士が転職先として選ぶコンサルは、次の2種に集約されます。
会計士が選ぶコンサルは2種
- FASコンサル
- 戦略コンサル
「FASコンサル」は、①国内系FASと、②監査法人アドバイザリー部門に分けられます。
FASは「監査法人からの転職先」としても非常に人気であり、監査経験を活かしながら、新たなスキルを獲得できるカテゴリです。
① 国内系FAS

FASとは、ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス(Finansial Advisory Services)の略称です。
明確な定義はありませんが、会計面から提供するコンサルサービスを指します。
一般に、FASには次のサービスが含まれます。
FAサービスの代表例
- 財務デューデリジェンス(財務DD)
- バリュエーション(VAL)
- 企業再生・事業再生
- その他FA(PPA、のれん減損など)
- 不正調査
このうち「国内系FAS」では、①財務DD、②VAL、③企業再生・事業再生を提供するのが一般的です。
監査法人のアドバイザリーと比較すると、クライアント規模が小さく、数多くのプロジェクトに関与します。
また、財務DDは監査とほぼ同様ですから、監査法人出身の会計士は即戦力になります。
FAS業界について、詳しくは「FASに転職した会計士が「仕事内容」「キャリア」を話します」でまとめて解説しています。
② 監査法人アドバイザリー部門

国内系FASのほかに、FASを提供する組織として「大手監査法人のアドバイザリー」という選択肢があります。
国内系FASとの相違点は、次のとおりです。
監査法人アドバイザリー vs 国内系FAS
監査法人 | 国内系FAS | |
---|---|---|
プロジェクト | 大 | 小~中 |
組織規模 | 大 | 小~中 |
給料 | 高い | ピンキリ |
品質 | 高い | ピンキリ |
忙しさ | 忙しい | ピンキリ |
関与するサービス | 限定的 | 幅広い |
監査法人のアドバイザリーは ネームバリューがあるため、クライアント規模が大きく、報酬(給与)も安定して高い傾向にあります。
しかし、プロジェクトの規模が大きいため、関与できる業務がサービスラインで区切られています。
サービス品質は高いため、① まず監査法人アドバイザリーで「あるべき水準」を知り、その後 ② 国内FASへ転職し経験を活かす、といったキャリアを経る方も多いです。
③ 戦略コンサル

「FAS」が会計面でのコンサルであるのに対し、「戦略コンサル」はビジネス(事業)面でのコンサルを指します。
クライアントの売上獲得に直結するため、大きなやりがいを得ることのできるカテゴリです。
3.監査法人
「監査法人」と聞いただけで、転職先の選択肢から外してしまう方が非常に多いです。
しかし、「大手監査法人」と「中小監査法人」では状況が大きく異なります。
大手監査法人 vs 中小監査法人
大手監査法人 | 中小監査法人 | |
---|---|---|
年収 | 中~高 | 中~高 |
残業時間 | 激務 | 少~多 |
クライアント規模 | 大 | 小~大 |
昇格しやすさ | 難 | 易 |
監査品質 | 極めて高い | 中~高 |
担当業種 | 限定的 | 幅広い |
① 大手監査法人(アシュアランス)

基本的に、BIG4(アシュアランス)であれば状況はどこもほぼ同様です。
ただし、「待遇」に関してはBIG4から他のBIG4に乗り換えただけで大きく改善されるケースがあります。
たとえば、EYではマネージャーポジションで働いていたとしても、KPMGではシニアマネージャーポジションを用意される、というケースもあります。
② 中小監査法人

近年とても注目されているのが、「中小監査法人」という選択肢です。
大手監査法人よりも安定しやすく、年収が上がるケースも多くあります。
私自身も、とある中小監査法人で勤務(非常勤)していますが、4~5月以外はほぼノー残業、雰囲気もピリピリ感がなく楽しいです。
働いてみて凄く(良い意味で)カルチャーショックを受けたので、ワークライフバランスを求める方にはオススメです。
ちなみに、もし私の働いている監査法人を「紹介して欲しい」という方がいましたら、こっそりとご紹介することは可能です。(ご応募の意思のある方限定ですが)
もし話を聞きたいという方がいましたら、お問い合わせください。
>>お問い合わせ
4.会計事務所

会計事務所での仕事内容は、代表者が「公認会計士」なのか「税理士」なのかによって 少し異なります。
代表が「税理士」の場合は税務のみに従事し、代表が「公認会計士」の場合はFAS・監査にも従事する可能性があります。
会計事務所の特徴
会計事務所 | |
---|---|
身に付くスキル |
|
携わる業務 |
|
組織の規模 | 5名~500名まで様々 |
クライアント規模 | 小~中 (個人のクライアントも有) |
年収 | ピンキリ |
繁忙期 | 1月~3月 |
*2 代表が会計士である事務所に限定される。
業務の割合として、最も多いのが「仕訳の記帳代行」です。
クライアントの取引を 会計ソフト(弥生会計やFreee等)を用いて仕訳入力することが、日々のルーティンとなります。
規模の小さな会計事務所であれば、1人で30社~40社ほど担当することもあり、幅広い税務のスキルが身に付くでしょう。
規模が大きくなるほど、「監査」や「コンサル」サービスも提供する傾向にあり、監査経験を活かすこともできます。
クライアント規模が小さいことから、特に将来独立を考えている会計士に人気の転職先です。
5.税理士法人

「会計事務所」と似ていますが、事業領域の異なる部分があります。
会計事務所と異なる点
- FASには関与しない
- (比較的)会計士の割合が少なく、税理士の割合が多い
- (比較的)クライアントの規模が大きい
会計事務所(公認会計士が所長の場合)は、FASを事業領域とするケースがありますが、税理士法人でFASを扱うことはありません。
そのため、税理士法人では「税務に特化できる」という点が大きな特徴です。
取り扱う領域は、主に次のとおりです。
税理士法人の事業領域
- 法人税・事業税
- 住民税
- 消費税
- 相続税
- その他、法人設立や税務コンサルなど
法人ごとに得意ジャンルは異なりますので、「どの領域でスキルアップを図るか」が1つの(法人選びの)基準になります。
また、大手税理士法人(BIG4)の場合、外資系クライアントを担当する可能性が高く、多少の英語力も必要になります。
6.投資銀行

投資銀行では、監査法人での経験を活かしながらも、金融・コンサルのスキルを身に付けることができます。
細かくは 国内系投資銀行、資系投資銀行に区分されます。
いずれも M&Aに関するFAコンサル に従事することとなります。
業務内容は 国内系FASに近いですが、以下の相違点があります。
国内系FASとの違い
- 「資金調達」も含めた総合的な提案が可能
- ビッグクライアントが多い傾向
- 英語力は必須
- FAの品質が高い
- 年収が高水準
- UP or OUTの文化がある
- 超激務
自社での貸付提案が可能な点が、大きな相違点です。
年収が高いものの激務であり、昇格できなければ契約の更新ができない、という点も大きな特徴になります。
金融に関して素地のある方にはオススメの転職先です。
7.PEファンド

戦略コンサルと比較されることがありますが、相違点は次のとおりです。
戦略コンサルとの違い
PEファンド | 戦略コンサル | |
---|---|---|
資金調達 | 自分で調達 | クライアントが調達 |
クライアントへの投資 | あり | なし |
クライアントの利益 | 投資持分を獲得 | 契約金額を獲得 |
ビジネスリスク | 自らが負う | 基本的に負わない |
戦略コンサルは、あくまで外部者としてビジネスを指南します。
クライアントのビジネスが失敗したとしても、(信用を失いますが)金銭的なリスクは限定的です。
しかし PEファンドは、ステークホルダー(投資家)として 「自ら」ビジネスを動かします。
このため、PEファンドはほとんどが投資銀行・戦略コンサル出身者で構成されます。
監査法人経験のみでは厳しく、コンサル等のキャリアを経た上で目指すのが一般的です。
公認会計士が転職する理由とは?

公認会計士の転職理由を見てください。
もしかすると 本記事を読んでいる方も、下記に該当するかもしれませんね。
公認会計士の転職理由 TOP3
- 監査以外のスキルを身に付けたい
- ワークライフバランスを取りたい
- 上司が気に入らない
監査法人に勤務していると、(監査スキルは上達するものの)監査以外のスキルを養うことができません。
特に シニア以上になるとチームが固定されることから、毎年 同じようなことの繰り返しです。
また 大手監査法人では仕事量が多く、変わった上司も多いことから、精神的ストレスが続きます。
監査法人の離職率が高いのも、ある意味で当然と言えるでしょう。
公認会計士が転職先を選ぶ「基準」

数多くのカテゴリの中から、転職先を絞るための基準(軸)は何でしょうか。
ここでは、会計士が転職先を選ぶ際の視点をご紹介します。
そんな方には、きっとご参考になります。
公認会計士が転職先を選ぶ基準
それぞれの「基準」ごとに、おすすめの転職先(カテゴリ)もご紹介します。
1.ワークライフバランス

現環境で疲弊し、転職を考える会計士は非常に多いです。
特に大手監査法人では、文書化やバウチング等(ムダとも思える作業)に追われることから、離職率が非常に高いのです。
ワークライフバランスの整いやすい転職先
- 経理
- 内部監査
- 中小監査法人
- 会計事務所
もちろん、上記4種であっても残業の多い企業はあります。
しかし、上記4種以外の転職先に比べると、圧倒的に残業時間は少ないでしょう。
また 意外と思われるかもしれませんが、「残業の少ない中小監査法人」もあります。(私の契約先がそうです)
2.監査以外のスキルアップ

BIG4内での昇格は厳しいことから、「この先、監査経験だけで生きていけるのだろうか」と不安を感じ、転職される方が多いのです。
監査法人からのおすすめの転職先は、次のとおりです。
監査法人からのオススメ転職先
- 経理
- 国内系FAS
- 監査法人アドバイザリー部門
- 会計事務所
上記4種の転職先では、企業会計のスキルを活用しながらも、新たなスキルを身に付けることができます。
そのため 監査法人からの転職者がとても多く、公認会計士の割合が多いのも特徴です。
3.やりがい

監査法人で「やりがい」が得られないのは、確かです。
そのため、やりがいを求めて転職する若手会計士(20~30代)は多いのです。
「やりがい」を得やすい転職先
- コンサル
- 会計事務所
- PEファンド
- 事業会社(内部監査を除く)
「やりがい」と「ワークライフバランス」は、トレードオフの傾向が強いです。
しかし、中には残業の少ないコンサル等もあります。
企業によって働き方は違いますから、詳細は求人票を確認してください。
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4.人間関係

公認会計士業界には、少し変わった人が多いです。
そのため 人間関係に悩み、転職を考える方もおらるようです。
人間関係の「合う合わない」は人それぞれですので、どの転職先が良いと一概に言い切ることはできません。
しかし、ある程度の傾向はあります。
人間関係が良い企業の特徴
- 「離職率」が低い
- 残業時間が少ない
特に、求人票記載の「離職率」はとても参考になるはずです。
なぜなら 居心地の良い企業ほど、人は辞めないからです。
離職率を軽視する方が多いようですが、非常に重要な指標です。
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5.独立を視野に入れたスキルアップ

私自身もそうでしたが、独立を見据えて転職する方は多いです。
しかし「必ずしも独立するか、まだ分からない…」という方の場合、転職先選びに悩むはず。
そんな方には、次の転職先がオススメです。
独立を視野に入れた転職先
- 会計事務所
- 国内系FAS
- ベンチャーCFO
会計事務所では、将来の自分自身の働き方を見ることができるでしょう。
また 独立した場合、「銀行との接点」がとても重要になります。
銀行との接点が重要な理由
- 独立後、クライアントを紹介してもらうパイプができる
- 助成金コンサルや、資金調達支援などに携わることができる
税理士登録をすると、所属の税理士会から度々クライアントを紹介されますが、それだけでは食べていけません。
そのため、銀行担当者との接点がとても重要になります。
また会計・税務だけでなく、資金調達や助成金周りの知識も、独立後のサービスラインの1つにできます。
そのため、(小規模な)国内系FASやベンチャーもオススメです。
6.年収

年収を高めたい場合、次の転職先がオススメです。
年収が高い傾向にある転職先
- 中小監査法人
- ベンチャーCFO
- コンサル
- PEファンド
- IBD
基本的に ワークライフバランスと年収は、トレードオフの関係にあります。
そのため、特に30代前半で体力のあるうちに、上記のキャリアを積む方が多いです。(ただし、中小監査法人の中にはワークライフバランスも取れる法人があります)
公認会計士が転職するタイミングは?

会計士が転職する時期としては、次のタイミングが一般的です。
公認会計士が転職するタイミング
- 修了考査に合格した後
- シニア、マネージャーに昇格した後
- キャリアに不安を感じた時
- 労働環境が辛いと感じた時
なお、会計士としての(転職市場での)価値がピークを迎えるのが、監査法人4年目~8年目の間です。
ちょうど主査やマネージメントを経験する頃(20代後半~30代中盤)に、最も需要が高まるようですね。
(私のケースでは 監査法人歴5年目で転職し、年収が200万近く上がりました。)
転職活動は「エージェントへの登録」から始まりますが、登録したからと言って、すぐ転職しなければならない訳ではありません。
しかし 登録を後回しにしてしまうと、段々と面倒になってしまい、転職するタイミングを失ってしまうのです。
転職先を決める前に、キャリアプランを考えることも大切

20代~30代の方なら、数多くの企業から内定が出るでしょう。 しかし、その転職先は果たして正しいでしょうか。
私たち会計士は、平均3~5回の転職を経験すると言われます。
今回の転職が、最後ではないかもしれません。
ぜひ、長期的なキャリアプランを考え、ゴールから逆算した転職先を選んでください。
会計士のキャリアプランについては、プロのアドバイザー(転職エージェント)に聞くのが手っ取り早いでしょう。
【1択】会計士が利用する転職エージェント

転職活動は、転職エージェントへの登録からスタートします。
なお、会計士が利用する転職エージェントは「マイナビ会計士」1択です。
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