公認会計士・税理士の藤沼です。
最近、20代で転職される会計士の方が増えているようで、当ブログ経由でご相談を受けることが増えてきました。
どのくらいの若手会計士が転職しているのか、市場動向も気になるかと思いますので、まずは転職する会計士の割合から解説します。
目次
20代で転職する会計士は、意外と多い。

結論から言えば、20代で転職する会計士は多いです。
過去にJICPAがアンケート調査を実施していますので、まずはその結果を見てみましょう。
① 20代で転職する会計士の割合
転職した会計士の年齢分布は、次のとおりです。
転職した会計士の「年齢」分布

(参照:日本公認会計士協会)
- 20代:約37%
- 30代:約51%
- 40代~:約12%
という結果でした。
また、「何歳で会計士試験に合格したか」という点も影響しますので、「転職時の実務経験年数」も参考に見てみます。
転職した会計士の「実務経験年数」分布

(参照:日本公認会計士協会)
- ~3年:約14%
- 4~5年:29%
- 6~10年:35%
- 11年~:22%
という結果でした。
10年以内に転職する人が全体の8割ほどなので、20代前半で監査法人に入所した方は、20代のうちに転職される方が多いと考えられます。
② 会計士全体の離職率
以下の記事でマニアックな分析をしたところ、5年で半数以上の会計士が(監査法人を)辞めるという結論が導かれました。
※ただし、BIG4からの離職に限る。
以上、JICPAのアンケート及び離職率の分析結果でした。
20代に限った話ではありませんが、監査法人から転職する会計士は非常に多いです。
よくある20代会計士の(監査法人からの)転職理由

では次に、「なぜ20代で転職する会計士が多いのか」その理由(転職理由)を見てみましょう。
20代会計士の多くがBIG4(アシュアランス)に所属していると思いますので、「BIG4に所属している若手会計士」の退職理由をまとめたところ、次の3つの転職理由が多く見られました。
よくある20代会計士の(監査法人からの)転職理由
- 残業が多い、プレッシャーが強い
- 仕事が面白くない
- キャリアアップ、将来への不安
なお、会計士の転職理由は次の記事でまとめています。
① 残業が多い、プレッシャーが強い
具体的には、次のような理由が多く見られました。
- 品質ばかり求められ、年々作業時間が増えている
- リソースが少なく、1人に対するプレッシャーが強すぎる
- 昇格しても残業時間が多く、夢がない
私がEYに入所した頃からずっとそうですが、監査業界では「品質の向上」が求められ続けます。
ゆえに残業時間は年々増加するのですが、これは監査というサービスの性質上、仕方のないこととも言えるでしょう。
体力のある人はBIG4に残り続けますが、多くの人は退職していきます。
② 仕事が面白くない
具体的には、次のような理由が多く見られました。
- 本質的でない、ムダな作業が多すぎる
- 仕事のやりがいが無い
- 誰のために仕事をしているのか、分からない
転職した会計士たちと話していても、「二度と監査はやらない」という人は多いです。(ほぼ全員)
大量のテンプレート文書化などが要求される一方で、考える作業が年々減るため、「つまらない」と感じるのは必然です。
私自身も、やりがいを求めてFASコンサルに転職しました。
③ キャリアアップ、将来への不安
20代会計士の転職理由として、最も多かった理由が「キャリアアップのため」でした。
具体的には、次のような理由が多く見られました。
- せっかく会計士になったので、監査以外の領域にチャレンジしたい
- 上(マネージャー、パートナー)が詰まり過ぎている
- この先「監査」のスキルだけで生きていくのは、不安すぎる
「会計監査」は汎用性の高いスキルであることから、監査法人での経験を活かしてキャリアアップする、という方がとても多いです。
私自身も、キャリアアップのためにEYから転職しました。
なお、年収は経験値に応じて自然とアップするため、「年収を上げるために転職した」という人は少数でした。
20代会計士に対する企業のニーズはある?

20代で転職する会計士は多く、転職理由も妥当なものが多いと思います。
では、「企業側の採用ニーズ」はあるでしょうか。
こちらもJICPAによるアンケート結果がありますので、見てみましょう。
企業側が求める、会計士の「実務経験年数」

(参照:日本公認会計士協会)
そのため、たとえば22歳でBIG4に就職した場合、25歳頃で企業のニーズが高まるため、転職するタイミングとしては最適と言えるかもしれません。
会計士が20代で転職するメリット

以上より、20代で転職する会計士は多く、企業側のニーズも(実務経験が3年あれば)高いという実態が分かりました。
では次に、「20代で転職することによるメリット」を見てみましょう。
こちらは、先述のOpenWorkの他、個別に実施したインタビュー結果も踏まえています。(他記事参照)
会計士が20代で転職するメリット
- キャリアの幅を広げやすく、キャリアアップしやすい
- 内定率が非常に高い
- 失敗できる
① キャリアの幅を広げやすく、キャリアアップしやすい
監査法人以外でのキャリアアップを目指すなら、早い段階で転職することが望ましいです。
なぜなら、「会計監査」は汎用性の高いスキルである一方で、習熟度が早く、5年程度で成長性が低下するからです。
30代後半にさしかかると、体力の衰えやライフイベントに備えるため、保守的な転職先を選びやすくなります。
そんな時にバックボーンが「会計監査のみ」では、低い評価・年収でスタートすることになるため、将来への不安が大きくなるでしょう。
体力のある若い時に様々な経験を積んでおくことは、想像以上に将来の役に立ちます。
② 内定率が非常に高い
実際に転職活動をしてみると分かりますが、「会計士である」というだけで、ほとんどの会社から内定が出ます。
書類選考で落とされてしまった1社は、PEファンドでした。
「30代ならFASの経験が欲しい」という理由で落とされてしまったのですが、20代であれば「ポテンシャル採用」があるようでした。
ポテンシャル採用は20代の特権とも言え、よりハードルの高い転職先からも内定が獲得しやすいでしょう。
③ 失敗できる
これは私の主観も入るのですが、若い=失敗しても良い、と考える組織は多い気がします。(だからこそ、ポテンシャル採用があるのかもしれません)
また、万が一キャリア選択を誤ったとしても、20代であれば十分に修正が効きます。
これも20代だけの特権と言えるでしょう。
会計士が20代で転職するデメリット

個人的には、20代で転職すること自体にデメリットを感じません。
しかし 次のようなケースで転職する場合、多少のデメリット(リスク)があります。
会計士が20代で転職するデメリット
- 1~2年で辞める場合
- 主査経験なしで監査法人以外に転職する場合
- 会計士登録前に転職する場合
① 1~2年で辞める場合
前職を1~2年で辞めて転職する場合(かつ、職歴がその前職のみの場合)、面接時に必ず退職理由を聞かれます。
私の事務所でも、若くて職歴の浅い方が応募してきた場合、わりと突っ込んだ質問をします。
もちろん、正当な理由があれば全く問題ないのですが、誤解のないように転職理由を伝える努力は必要です。
ちなみに、回答として一番マズいのが「前職のチームが合わなかった」「監査が自分に合わなかった」などのネガティブな回答です。
② 主査経験なしで監査法人以外に転職する場合
経理やFAS、会計事務所などに転職する場合、「主査経験の有無」を確認されるケースがあります。
経理であれば監査対応において、またFAS/会計事務所であれば各プロジェクト牽引において、主査経験(マネジメント経験)が活かされるからです。
マネジメント経験は監査法人以外でも経験できますが、キャリアアップよりも早期の年収アップを重視される方は、念頭に置かれると良いでしょう。
③ 会計士登録前に転職する場合
会計士登録前に転職する場合、次の2点に注意する必要があります。
- 「実務要件」が満たせるか
- 「試験休暇」が取れるか
特に、修了考査の合格率が低下している昨今、「試験休暇」の重要性は非常に高いです。
この点で、会計士登録を最優先するのであれば、転職先の選択肢が少し狭まってしまうリスクがあります。
とはいえ、BIG4にいる限り残業時間が年々増加しますから、勉強に割ける時間が減るのも事実です。
20代会計士が転職する際の「キャリアの考え方」

「監査法人から転職したいけど、キャリアをどう考えれば良いのか分からない」という方は多いと思います。
ここでは、20代で転職した会計士へのインタビュー、及び私の失敗談も踏まえて、「キャリアの考え方」のヒントを書きたいと思います。
考え方は人それぞれのはずですので、あくまでキャリアを考える際のヒントとしてご参考ください。
20代会計士が転職する際の「キャリアの考え方」ヒント
- 「転職後の転職」も考える
- キャリアの選択肢が広がるような転職先を考える
- 転職活動での5つの軸
① 「転職後の転職」も考える
今回の転職が、人生最後の転職になるとは限りません。
人生は長いですから、多くの場合、今回の転職は通過点に過ぎないでしょう。
「今何がやりたいか」はとても大切ですが、「将来のやりたい事に役立つか」という視点もあります。
若ければ若いほど、転職を重ねることができますから、「踏み台としての転職」という視点でも考えてみると良いでしょう。
② キャリアの選択肢が広がるような転職先を考える
逆に、「将来何をしたいか分からない」という方も多いでしょう。
そんな方は「選択肢を広げるような転職先」を考えると良いです。
各転職先の「将来性」については、次の記事でそれぞれ画像を付けています。
基本的に、監査以外の職種であれば、キャリアの幅は広がりやすいです。
ただし、次の転職先はキャリアの選択肢を狭める傾向にあると思います。(アンケート等を経た、私の主観です)
将来の選択肢が狭まる(可能性のある)転職先
- 税理士法人
- 事業会社の内部監査部
監査法人から税理士法人に転職される方、たまにお見掛けします。
明確な目的があれば問題ないと思うのですが、ぼんやりと「税務の知識も身に付けたいな~」と思っている方には、あまりオススメできません。
というのも、「会計×税務」というスキル、意外と汎用性がないのです。
「会計×税務」と言うと聞こえは良いのですが、「実際どのようにキャリアで役立てるのか?」は事前に考えておくべきです。
また、内部監査部門もあまりオススメできません。
なぜなら、「内部監査」という経験を評価する会社が少ないからです。
内部監査の求人自体が非常に少なく、潰しが効きづらいため、少なくとも20代の方にはあまりオススメしません。
③ 転職活動での5つの軸
転職活動自体が初めての方も多いと思いますので、転職先選びの「軸」となる考え方を示しておきます。
網羅的な視点でキャリア・転職先を考えたい方は、どうぞご参考ください。
転職活動での5つの「軸」と具体例
■ 仕事内容 |
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■ 働き方 |
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■ 収入 |
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■ 組織、経営方針 |
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■ 昇給、昇進、異動 |
|
上記は、あくまで転職先選びにおける「軸」の列挙です。
どの軸を重視すべきかは、「自己分析」及び「カウンセリング」を受け、慎重に考えましょう。
20代会計士がBIG4を辞める際の注意点

私はEYで働いていましたが、辞めてみて気付いた事が1つあります。
それは、同期・同僚の大切さです。
BIG4から転職するということは、新たなスキル・経験が手に入る一方で、会計監査の第一線から退くということです。
結局BIG4を辞めても、BIG4の動向は気になります。
そんな情報を気軽に聞けるのが、BIG4で働いている同期・同僚です。
ぜひ、辞める時こそ同期・同僚との繋がりを大切にしてください。
20代会計士の転職先とその特徴

会計士の転職先は、全12種あります。
詳しくは上記記事が参考になりますが、ここではザックリと各転職先とその特徴を記したいと思います。
20代会計士の転職先とその特徴
事業会社 | |
経理部 |
|
内部監査部 |
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経営企画部 |
|
ベンチャーCFO |
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FAS系 | |
BIG4のアドバイザリー |
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国内系FAS |
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税務系 | |
税理士法人 |
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会計事務所 |
|
その他 | |
PEファンド |
|
投資銀行 |
|
戦略コンサル |
|
中小監査法人 |
|
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特に転職が初めての方は、キャリアのカウンセリングが必須になります。
できる限りキャリアの幅を狭めないよう、多くの選択肢を提供してくれるエージェントを利用することをオススメします。