公認会計士の非常勤、小さなデメリット vs 大きすぎるメリット【独立5年経過】

監査法人での非常勤が超おすすめな理由+求人の探し方3選【給与明細公開】

公認会計士・税理士の藤沼です。

独立後、中小監査法人で非常勤職員として働いています。

この非常勤契約、デメリットに比べてメリットがあまりに大きいと話題です。

非常勤で働くメリット・デメリット

メリットデメリット
給料が2~3倍になる

残業が少ない
主査を任されない

人間関係のストレスがない

人脈が広がる
いつでも正社員に復帰できる
社会保険に加入できない
契約期間が保証されない

協会の会費が自己負担

(BIG4の場合)残業が多い

私は独立して5年が経ちましたが、この5年間で、非常勤求人の時給単価がどんどん上がっています。

そりゃそうですよね。この業界、ず~っと人手不足ですから。

背に腹は代えられず、高給払ってでも会計士を雇いたい監査法人は多いんですよ。

本記事では、実際に監査法人の非常勤として働いている私が感じた「メリット」「デメリット」を解説します。

結論としては、さっさと非常勤に切り替えることをオススメします。

価値観は人それぞれですが、メリットデメリットを比較すれば分かりますよ。

なお、本記事は公認会計士向けの内容です。
大学生の非常勤については、公認会計士の学生非常勤は時給が良いけど、デメリットもあるので注意!の記事で解説しています。

この記事を書いた人

1986年生まれ(38歳)
公認会計士税理士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表


目次

公認会計士が非常勤で働くメリット全6選

公認会計士が監査法人で非常勤をするメリット

私たち公認会計士が監査法人で非常勤をするメリットは、6つあります。

それぞれ解説します。

給料が2~3倍になる

非常勤としての時給単価はかなり高いです。

たとえば私の場合、

  1. 正社員時代(EY)  :時給 3,500円
  2. 非常勤(中小)1社目:時給 7,000円
  3. 非常勤(中小)2社目:時給10,000円

EY時代は、年間2,000時間の労働で年収700万でしたので、時給換算すると約3,500円でした。

一方、中小監査法人での非常勤では1社目が7,000円、2社目が10,000円です。

文字通り、時給単価が2倍~3倍になりました。
やってることは何も変わらないし、何なら楽になったのに。

ちなみに、私のEYでの監査経験は4年半でしたので、シニアスタッフレベルでこの給与水準です。

正社員として働くのがバカらしくなる人もいるでしょう。

だって、日当8万円ですよ。

ちなみに、私が今まで見てきた非常勤の中で、最も時給が高かったのは「時給20,000円」という求人がありました。
さすがに驚いた。

数年前までは、ここまでの高単価求人はありませんでした。

まさにバブル。

こうした高単価求人はすぐに枠が埋まるので、予めエージェントに登録しておき、求人をタイムリーに入手できる仕組みを作っておくのがコツです。

主査を任されない

基本、非常勤職員には主査を任されません。

以前、どこかの監査法人が監査チームの大半を非常勤で構成したことで、「現場を回せる正規職員がいない」という品質管理上の問題を指摘されていましたよね。

そのような経緯から、通常、主査を担当するのは正社員の公認会計士です。

主査を任されないということは、具体的に次の作業が振られないという事です。

非常勤がやらなくて良い作業(例)
  • パートナーの日程調整
  • チームメンバーのアサイン調整
  • 後輩への指導(一部例外あり)
  • 監査計画の立案
  • 監査調書のレビュー
  • 審査


原則、マネジメント・審査関連の作業が不要ですので、振られた作業だけをこなせば良いことになります。

簡単に言えば、J1・J2頃のスタッフのような感覚。

現場を回す必要性は皆無です。

作業員としての責任はありますが、主査としての責任は問われないので、例えば家に帰った後も仕事のことで頭がいっぱいになったりする…なんてことはまずありません。

残業が少ない

監査法人での非常勤は、基本残業がないです。

当たり前ですが、高単価の非常勤職員に働かせるより、固定給で残業代も安い正社員に働かせた方が経費が浮くからです。

もちろん、主査業務がないのも理由の1つです。

だから原則残業がありませんし、私も期末監査以外はほぼ定時で帰っていました。

※ ただし!BIG4や準大手監査法人は残業多めなので注意。

ちなみに、私は期末監査でも1日2時間程度の残業でした。
かなり少ない。

中小監査法人は全体的に労働時間が短いので、選ぶなら絶対、中小監査法人をオススメします。

人間関係のストレスがない

非常勤で働くと、人間関係のストレスもほぼなくなります。

非常勤職員は外部業者のような扱いになるため、関係性も密になりづらく、人間関係のストレスがなくなります。

もちろん、パワハラもまずありません。
万が一あったら通報すれば良いです。

主査を任されないため、仕事でミスをすることも少ないでしょう。

上司・部下のような関係もありません。

プレッシャーはほぼゼロです。

残業も少ないですから、胃がキリキリするようなストレスを感じることは皆無と言っても過言ではありません。

仕事を紹介してもらえることがある

非常勤で働いていると、他の非常勤職員からクライアントを紹介され、仕事に繋がるケースがあります。

もちろん報酬が発生しますし、監査以外の経験も身に付きます。

たとえば私の場合、監査法人つながりで新しい契約を頂いたことがありますし、逆に私の事務所の仕事を非常勤会計士に依頼したこともあります。

そこから信頼を得て、さらに仕事を紹介してもらえるようになると、営業しなくとも自然とクライアントが増えるようになります。

実際、私も大半のお客様が紹介の方々です。

非常勤だけをしたい方にとってはメリットになりませんが、自身の会計事務所を大きくしたい方にとっては、メリットになるでしょう。

いつでも正社員に復帰できる

最後に、非常勤になってもいつでも正社員に復帰できるというメリットがあります。

「いやいや不景気になったらどこも雇ってくれないだろ」

なんてツッコミもありそうですね。それは勿論その通り。

腐っても会計士なので一般の方々よりは景気の影響を受けづらいですが、約15年前のリーマンショックのような事が起きると会計士も影響を受けます。

ただ、非常勤は身軽なんです。
不景気になってきたと思ったら、さっさと就職活動して、雇用に悪影響が出る前に就職すれば良いんです。

だから実質、いつでも正社員に復帰できます。

そんな簡単に辞められるのかって?
はい。簡単に辞められます。

私は1社目の監査法人(の非常勤)の契約終了意思表示をしてから、約2か月後に辞めました。

職歴に空白期間のできた人を雇う組織があるのかって?

ありますよ、沢山。

会計士として独立開業したことになるんですから、何の資格もない人がフリーターをやっていたのとは訳が違います。

公認会計士が非常勤で働くデメリット全4選

公認会計士が監査法人で非常勤をするデメリット

私たち公認会計士が監査法人で非常勤をするデメリットは、4つあります。

それぞれ解説します。

契約期間が保証されない

非常勤職員には、契約期間が保証されていません。

もちろん具体的な契約内容はケースバイケースですが、多くの場合、1年契約の更新制です。

つまり、理論上は1年で契約を切られる可能性があります。

ただし、現在は非常勤契約を切られるケースはかなり少ないと思います。

私の周りの非常勤会計士から「契約を切られた」という話を聞いたことがありませんし、監査法人側としても業務に慣れてきた会計士を切る理由もありません。

よほどの不祥事を起こせば別ですが、通常は、毎期更新されます。

また、万が一契約を切られたとしても、他の監査法人で契約をすれば良い話です。

社会保険に加入できないケースが多い

非常勤職員として勤務する場合は、ほとんどの場合が「業務委託契約」になります。

その場合、社会保険に加入することができず、国民年金・国民健康保険への加入が必要になります。

ご存知のとおり、国民年金保険料・国民健康保険料は(社保自己負担額に比べると)金額が大きくなりやすいため、デメリットに成り得るでしょう。

※ 雇用形態として「雇用契約」で非常勤職員を雇うケースもありますが、社会保険加入条件を満たさない範囲の日数での契約となるケースが多いです。(参考:厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト

ただし、正社員を辞めてから2年間は、前職の社会保険を任意継続することができます。

社会保険の任意継続について、詳しくは【TAA健保】任意継続の方法を解説します【画像付き】の記事で解説しています。

これによって保険料を低く抑えることが可能ですので、デメリットを解消できます。

公認会計士協会の会費が自己負担のケースあり

非常勤職員の場合、公認会計士協会の年会費を負担してもらえないことがあります。

法人の方針にもよりますが、アサイン日数の多さによって会費の負担関係を変えるケースもあります。

とはいえ、所属地域によって異なるものの、年会費はおおよそ10万円程度です。

個人事業主として経費にもなりますし、1~2日働けば十分稼げる金額。

さほど大きなデメリットではないでしょう。

BIG4の場合、残業が多くなりやすい

BIG4で非常勤契約をすると、残業は多くなる傾向にあります。

BIG4で働いてきた方なら分かるでしょう。

また、BIG4は中小監査法人に比べて時給単価が低いです。

ただでさえ時給単価が安いのに、拘束時間が長くなるとコストパフォーマンスはどんどん低下します。

そのため、余程の理由がない限り「中小監査法人」を選ぶべきです。

監査法人の非常勤の時給相場は7,000円

公開されている監査法人の非常勤求人30件抽出し、横軸に並べました。

監査法人30社の非常勤時給データ

※ 監査法人によっては時給単価に幅をもたせている法人(たとえば時給6,000円~8,000円など)もありましたが、ここでは保守的に低い方の金額を集計しています。

上記グラフから分かる通り、時給4,000円から時給10,000円まで、法人によって時給に大きくバラつきがあります。

全てを平均すると「6,926円/時」となり、時給相場は約7,000円と言えます。

上記の求人は全てシニアスタッフクラス向けの求人ですので、会計士歴4年目~の方が対象です。

なお、法人ごとの時給単価には次のような傾向が見られました。

非常勤求人の傾向
  • 英語力・IFRS経験を求める求人は、時給が高い
  • M&A関与経験を求める求人は、時給が高い
  • IPO関与経験を求める求人は、時給が高い
  • 税務経験を求める求人は、時給が高い
  • 実務経験3年以上を求める求人が多い
  • 大手監査法人は時給が低く、中小監査法人は時給が高い

私が非常勤で働いた時の給与明細

ちなみに、私が非常勤をしていた頃の給与明細を見せます。

私が非常勤で働いた時の給与明細

私が非常勤で働いた時の給与明細

※ 法人名を特定できる可能性のある箇所にはマスキングしています。

時給単価は、7,000円/時で契約しました。

5日間 の勤務で、額面 22万円 です。(1日6時間勤務、残業は計2時間)

正社員(EY)時代は、2,000時間働いて年収700万円でした。

正社員時代の給料を時給に換算すると3,500円なので、非常勤としての給与は、正社員時代の約2倍になった計算です。

また、繁忙期となる4月の給与は次のとおりでした。

繁忙期に非常勤として働いた時の給与明細

繁忙期に監査法人で非常勤をしたときの給与明細

14日間勤務して額面給与は77万円でした。(1日6時間勤務、残業は1日2時間以内)

私は稼働日数を抑えていましたが、フル出勤なら月収120万円くらいになります。

残業時間も少ないため、体への負担がほとんどありません。

なお、上記は1社目の監査法人でして、2社目の監査法人では時給10,000円で契約しました。

時給20,000円の非常勤求人もある

公開求人ではないため法人名を出すことはできませんが、時給2万円の監査法人の非常勤求人もあります。

私の知人会計士が実際にもらっている額で、給与明細も見せてもらったので間違いありません。

日当16万円ですよ。かなり衝撃的。

ただし条件は厳しく、BIG4でのマネージャー経験を求められます。

なお、こうした高単価求人は絶対にweb上には公開されません。

なぜって、それを万が一クライアントに見られると都合が悪いからです。

「高単価」「ワークライフバランス重視」「副業OK」など、求職者にとって魅力的な求人ほど、クライアントの目を気にして非公開にする傾向が強いです。

そのため、転職エージェントに登録しない限り、このような求人を見つけることはほぼ不可能です。

公認会計士の非常勤の年収シミュレーション

公認会計士の非常勤は稼げます。

計算ツールを設置したので、年収をシミュレーションしてみましょう。

日当・年収計算ツール

目次